全国6,301校。不登校・発達障害の子のための高校さがしができるまで

高校のガイドブックを開くと、最初に目に入るのは偏差値です。進学実績、部活動、制服。どれも大事な情報ですが、学校に行きづらい子の保護者が本当に知りたいことは、たいてい載っていません。

中学で休みが多かったら、入試でどう扱われるのか。教室に入れない日に、休める場所はあるのか。試験のとき、読み書きの配慮をお願いできるのか。

最近、不登校や発達障害の、中学生のお子さんの相談が増えてきました。どちらにも共通しているのが、高校をどうするかという問題です。配慮のある高校を探すのが大変だ、という声を聞いて、まとめてみようと思い立ちました。

細かく書くほど、探しにくくなった

全国の相談先をまとめた「不登校・発達の相談先ガイド」を公開したあと、次に取りかかったのが、この高校さがしです。最初に試作したのは、地元・東京都のページです。高校を「不登校・発達障害への支え」から探せるようにしました。

最初の試作は、正直に言うと、使いにくいものでした。東京都の高校約460校のカードに、学校の資料からの長い引用や、「記載なし」という但し書きがずらりと並んでいました。間違いのないようにと、細かく書けば書くほど、保護者が探しにくくなっていたのです。

そこで、方針を変えました。辞書をつくっているわけではない。細かい但し書きは一か所にまとめ、学校ごとの説明は短くして、条件を選んで絞り込めるようにしました。「朝がつらい(午後・夕方から通いたい)」「毎日は通えない」「教室に入りにくいときの別室・居場所」。不登校や特性のある子の家庭が、実際に気にすることから探せる形です。

高校さがしの鳥取県のページ。鳥取県の高校48校、不登校への支えの具体的な記載26校、発達障害への支えの具体的な記載27校の3つのボタンと、条件を選んでさがすボタンが並んでいる
都道府県のページ(鳥取県)。支えの記載から学校を探せます

もう一つ、途中で自分に言い聞かせたことがあります。これは、不登校の子と、発達障害の子のためのサイトだということです。網羅しようとすると、つい一般の受験ガイドに近づいていきます。偏差値も進学実績も部活も載せない。載せるのは、欠席の扱い、入試の配慮、入学後の支え、通いやすさ。その子たちの役に立つかどうかで、載せるかどうかを決めました。

他のサイトは、手がかりにだけ

学校の情報は、すべて学校・都道府県・国の公式資料で確かめたものだけを載せています。

ネットで調べると、通信制高校などを比べるまとめサイトがたくさん見つかります。参考にはなりますが、出典が書かれていなかったり、情報が古かったりします。調べてみたら、東京都のチャレンジスクール7校のうち、2校が抜けているサイトもありました。

なので、他のサイトで見つけた情報は、調べる手がかりにだけ使いました。学校の公式資料で見つかったら、出典を付けて載せる。見つからなければ載せない。「他のサイトによると」とも書かない。地味ですが、ここは譲れないところでした。

都道府県ごとに、こんなに違う

まず東京都のくわしい版と全国のページを公開し、そこから一県ずつ、くわしい版を増やしていきました。公立も私立も、ほかの県が認可した通信制の拠点も、学校の資料を一校ずつ読む。気の遠くなるような量です。

一県ずつ調べてみて驚いたのは、欠席の扱いが、都道府県によってまったく違うことです。

福井県では、県立高校の入試で出す書類から出欠の記録欄がなくなり、出欠の状況は評価の対象にならないと説明されています。北海道の道立高校の入試では、調査書の出欠の記録を選抜の資料に使いません。鳥取県では、中学3年の欠席が原則50日以上の人などが、学校に行けなかった理由や高校で学びたいことを「自己申告書」に書いて出せます。京都府では、府立の朱雀・乙訓・城陽・西舞鶴の4校(全日制普通科)に、中学のいずれかの学年で年間30日以上欠席した人を対象にした「長期欠席者特別入学者選抜」があります。宮城県では、2027年4月に県立広瀬ideal高校が開校し、集団生活が苦手だったり対人関係に不安を感じたりしていても、自分のペースで学びたい生徒などを受け入れたいとしています。

隣の県に引っ越したら、入試のルールが変わる。それくらいの違いです。住んでいる都道府県の制度を知っているかどうかで、選べる道が変わってきます。

47都道府県がそろうまで

そして、最後の宮崎県を公開して、ようやく47都道府県すべてがそろいました。

掲載している高校は、全国でのべ6,301校になりました。そのうち、公式資料に不登校への支えの具体的な記載があった学校はのべ1,823校、発達障害への支えの具体的な記載があった学校はのべ1,744校です。

高校さがしの全国ページ。日本地図と、47都道府県のボタンが地方ごとに色分けされて並んでいる
全国のページ。地図か一覧から都道府県を選べます

最大40組を並行して処理する仕組み

この量を一校ずつ読めたのは、AIのおかげです。

学校をおよそ9校ずつの組に分けると、東京都を除いても640組を超えました。一つの組ごとに、AIエージェントが学校の公式資料を読んでまとめ、それを別のAIが根拠の原文と突き合わせて確かめます。引用が原文と一字一句同じかは、プログラムで自動検査します。直す点が見つかれば手直しして、もう一度確かめる。記載の取りこぼしがないかも、あとから調べ直す。この流れを、最大40組まで並行して処理できる仕組みをつくりました。AIに頼んだ作業は、数えられるものだけで延べ2,000回を超えます。

1回目の照合で直す点が見つかった組は、640組あまりのうち312組。およそ半分です。AIに任せきりにせず、別のAIが誤りを見つけて直す。この仕組みがなければ、それだけの誤りが残っていたかもしれません。

支えの記載の基準も、厳しめにしました。いじめ対策の委員会にスクールカウンセラーの名前があるだけ、「委員会で検討する」と書いてあるだけ、過去の年度に通級をしていただけ、という学校には、支えの印を付けていません。

使ったAIは、Claude、Codex(OpenAI)、Gemini、Grokの4種類です。調べたAIと確かめるAIは、原則として別のものにしました。同じAIどうしだと、同じところを見落とすかもしれないからです。残った指摘の判断や公開前の最終確認は、私が決めた基準にそって、統括役のAI(Claude)が行いました。公開の前には、本番のページを実際のブラウザで開いて、全校の表示やスマホでの見え方も確かめています。

根拠として保存した公式資料の抜き書きは、3万6,000件を超えました。サイトに出典として載せたリンクも、重複を除いて1万2,900を超えています。

AIの頭脳は、クラウドの上にあります。手元にあるのは、サーバー用のCPU(Intel Xeon Gold 6252N)を4コア、メモリ32GBで動かしているサーバー1台だけです。このサーバーが、全体の指揮と、学校のサイトから資料を集める作業、引用が元の資料と一字一句一致するかの検査を担いました。いちばん忙しかったときは、CPUの使用率がほぼ100%(作業していたマシン全体の値で、4コア合計の10分平均98.8%)、ロードアベレージは約22まで上がりました。集めた学校のページ、根拠の資料、AIとのやりとりの記録などを合わせると、作業データはおよそ80GBになりました(途中の作業ファイルを含みます)。

子どもたちにAIの使い方を教えている団体として、自分たちでも、AIを使い倒してつくったサイトです。それでも、AIは読み違えることがあります。だからこそ、すべての記載に出典のリンクを付けて、元の資料をたどれるようにしています。

書いていないことは、ないことではない

使うときに、一つだけ気をつけてほしいことがあります。

このサイトで「記載が見つからない」学校にも、支えがないとは限りません。資料に書いていないだけ、ということはよくあります。反対に、記載があるからといって、支えが手厚いとも限りません。実際に利用できるかは、学校ごとに相談が必要です。

学校の説明会に本人が行くのが難しいときは、保護者だけの相談や個別の見学ができるかを、たずねてみてください。

入試の制度や学校の支えは、年度ごとに変わります。出願の前に、必ず学校・都道府県の公式の資料で確かめてください。

東京都の場合、都立高校の入試で試験の配慮を希望するなら、12月18日(金)までに中学校を通して申請します。私立はもっと早い学校もあります。早めに、中学校の先生に相談してください。

選択肢があると知るだけで

このサイトで、行く学校が決まるわけではありません。それでも、休みが多いから行ける高校はない、と思い込んでいた家庭が、意外と選択肢があることを知る。そのきっかけになればと思っています。

不登校・発達障害の子の高校さがし:https://digitalkodomo.jp/koukou/

公開のお知らせ(プレスリリース):https://digitalkodomo.jp/news/2026-11-07-koukou-launch.html

不登校・発達の相談先ガイド:https://digitalkodomo.jp/futoko/

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デジタルこどもBASEでは、学校に行きづらい小中学生のための「ふらっとラボ」を、大田区で月に1回開いています。参加は無料で、パソコンは一人1台用意しています。次回は11月16日(月)13時からです。

著者:漆谷 智行(デジタルこどもBASE理事長)