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密度 ── 物質を「同じ大きさ」で比べる

「鉄1kgと綿1kg、どちらが重い?」という冗談を聞いたことがあるかもしれません。答えはもちろん同じ1kg。でも、ふつう私たちが「鉄は重い」「綿は軽い」と感じるのは、同じ大きさ(同じ体積)でくらべたときのこと。物質の性質を正しく比べるには、大きさをそろえる必要があります。そのためのものさしが 密度 です。今回は、密度の式と使い方、そして物質の見分け方までまとめます。

同じ大きさで比べないと意味がない

鉄のかたまりと綿のかたまりを比べるとき、片方が大きくて片方が小さいと、どちらが「ぎっしりつまっているか」は分かりません。物質の性質をくらべるなら、まず 大きさをそろえる ことが必要です。

そこで、理科ではいつも 1cm³(1立方センチメートル=1辺1cmのサイコロの大きさ)あたりの質量 でくらべます。これが 密度です。

用語:密度
単位 g/cm³(グラム毎立方センチメートル)
物質 1cm³ あたりの質量 のこと。同じ温度・同じ状態なら、同じ物質では大きさを変えても密度は同じになる。「g/cm³」は「1cm³あたり何g」と読む。

密度の式

密度は、質量を体積でわるだけで求められます。

公式
密度の求め方

密度(g/cm³)= 質量(g)÷ 体積(cm³)

この1本の式は、知りたいものを左辺に持ってくれば3つの使い方ができます。

密度の式の3つのかたち

密度知りたい:密度 = 質量 ÷ 体積

質量知りたい:質量 = 密度 × 体積

体積知りたい:体積 = 質量 ÷ 密度

身近な物質の密度(覚えておくと便利)

よく出てくる物質の密度は、いくつか頭に入れておくと問題がぐっと解きやすくなります。

覚えておきたい密度(g/cm³)
  • 水:1.00 ← これが基準!超重要
  • 氷:0.92(水より小さい ── だから氷が水に浮く!)
  • エタノール:0.79
  • アルミニウム:2.70
  • 鉄:7.87
  • 銅:8.96
  • 金:19.3(とても重たい金属)

とくに 水の密度が 1.00 g/cm³ というのは何度も使います。水は浮き沈みを考えるときの基準になり、これより大きいか小さいかが、いろいろな現象を分けます。

水に浮く・沈むは密度で決まる

物質が水に浮くか沈むかは、同じ物質のかたまりとして見ると、形や大きさそのものではなく 水と物質の密度の大小で決まります。空気をふくむ船や中空の物体では、全体としての平均密度で考えます。

きまり
浮き沈みの判定

物質の密度 > 1.00 g/cm³ → 水に沈む

物質の密度 < 1.00 g/cm³ → 水に浮く

具体的に見てみます。

  • 木:多くの木は 0.4〜0.8 g/cm³。だから水に 浮く。
  • アルミニウム:2.70 g/cm³。水より重いので 沈む。
  • 氷:0.92 g/cm³。水より軽いので 浮く。コップの氷が浮くのはこのため。
  • 鉄:7.87 g/cm³。当然 沈む。
意外な例:水銀の上では鉄が浮く
  • 水銀(じょうおんで液体の金属)の密度は 13.6 g/cm³。
  • 鉄の密度は 7.87 g/cm³ なので、水銀より軽い。
  • つまり、水銀の中に鉄を入れると、鉄は 浮く!
  • 「重そうな鉄が浮く」というのは、相手の液体の密度しだい。浮き沈みは 2つの密度のくらべっこ なのだと分かります。

密度で物質を見分ける

密度は 物質を見分ける手がかり になります。同じ大きさに見える金属でも、質量を測って密度を出せば、それが何の金属に近いかを推測できます。

例題:体積 10cm³、質量 78.7g の金属がある。これは何の金属か?

密度 = 78.7 ÷ 10 = 7.87 g/cm³。表と照らし合わせると → 鉄。

このように、見ただけでは区別できない物質も、密度を計算して表と比べれば、正体を推測しやすくなります。これが理科で密度を学ぶ大きな理由のひとつです。

体積の測り方 ── メスシリンダーと水

サイコロのように形がきれいなら、たて×よこ×高さで体積が出せます。でも石ころや金属のかたまりのように 形がふぞろい なものは、計算できません。そんなときに使うのが メスシリンダーです。

メスシリンダーで体積を測る手順
  1. 水をある量、メスシリンダーに入れて目盛りを読む(たとえば 50 mL)。
  2. そこに調べたい物質をしずかに沈める。
  3. 水面が上がる。新しい目盛りを読む(たとえば 65 mL)。
  4. 増えた分(65 − 50 = 15 mL)が、その物質の 体積。

※ 1 mL = 1 cm³ なので、15 mL = 15 cm³ として密度の計算に使えます。

密度のちがいで浮き沈みが決まる 水(1.00) 氷 0.92 浮く 鉄 7.87 沈む 水銀(13.6) 鉄 7.87 浮く! 金 19.3 沈む 判定のしかた 物体の密度 < 液体の密度 → 浮く 物体の密度 > 液体の密度 → 沈む ※「重い・軽い」ではなく  密度のくらべっこで決まる
図1:水と水銀での浮き沈み。「沈むか浮くか」は液体の密度しだい

この章でつまずきやすいところ

密度の単元は、本文を読みながら「重い=密度が大きい」と早合点したり、式の形に迷ったりしやすい場面が続きます。途中で立ち止まりがちな具体場面を取り上げ、考え直すコツを整理します。

「重い物質ほど密度が大きい」と思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文で「鉄は重い、綿は軽い」と読んだ直後に、密度の表を見て「鉄1kgと綿1kgならどちらの密度が大きい?」と聞かれ、質量だけを見て答えそうになる場面。
  • 克服のコツ:見分け方は「体積をそろえてから質量を見る」こと。密度は単位体積(1cm³)あたりの質量なので、同じ1cm³に切りそろえて初めて比べられる。質量が大きい=密度が大きい、ではない、と確認してから式に進む。
  • ミニ例:鉄1kgと綿1kgは質量は同じだが、綿は体積が大きいのでスカスカ。1cm³に切ると鉄のほうがずっと重い → 鉄の密度が大きい。

公式の3つの形が混ざってしまう

  • つまずく場面:「体積10cm³、質量78.7gの金属の密度は?」を解こうとして、密度=体積÷質量と書いてしまったり、質量を求める問題で密度÷体積としてしまう場面。
  • 克服のコツ:「÷の上は知りたいもの、下はそろえる単位の体積」と覚える。基本は 密度=質量÷体積 の1本だけ。質量を知りたいときは両辺に体積をかけて 質量=密度×体積、体積を知りたいときは 体積=質量÷密度 に変形する、と順に確認する。
  • ミニ例:体積10cm³・質量78.7gなら、密度=78.7÷10=7.87 g/cm³。逆に密度7.87の鉄が5cm³なら、質量=7.87×5=39.35g と変形する。

浮き沈みを「大きさ」や「重さ」で決めてしまう

  • つまずく場面:「鉄は重いから必ず沈む」と読み進めたあと、本文の「水銀の上では鉄が浮く」という記述に出会い、なぜ重い鉄が浮くのか分からなくなる場面。
  • 克服のコツ:因果関係は「物体の密度と液体の密度のくらべっこ」で決まる、と整理する。物体の密度<液体の密度なら浮く、>なら沈む。重い・軽いという感覚ではなく、必ず2つの密度を並べて大小を見るクセをつける。
  • ミニ例:鉄の密度は7.87、水(1.00)より大きいので水には沈む。一方、水銀の密度は13.6で鉄より大きいので、同じ鉄が水銀の上では浮く。

メスシリンダーで読み取る数値の意味を取り違える

  • つまずく場面:形がふぞろいの金属を沈める問題で、最初の水面50mLと沈めた後の水面65mLが出てきたとき、どちらの数字を体積として使えばよいか迷い、65mLをそのまま体積にしてしまう場面。
  • 克服のコツ:時系列で確認する。「あとの目盛り − 前の目盛り=物質の体積」。沈める前と後の差が、押しのけた水の体積=物質の体積になる。さらに 1mL=1cm³ なので、単位の置きかえも忘れずに行う。
  • ミニ例:50mL→65mLに上がったなら、体積は65−50=15mL=15cm³。質量が40.5gなら密度=40.5÷15=2.70 g/cm³ → アルミニウムと推測できる。

練習問題

問題1(基本計算)
次の物質の密度を求めなさい。単位は g/cm³。
  1. 体積 5 cm³、質量 13.5 g の金属
  2. 体積 20 cm³、質量 56 g の金属
  3. 体積 8 cm³、質量 154.4 g の金属
答えを見る

(1) 13.5 ÷ 5 = 2.70 g/cm³(→ アルミニウム)

(2) 56 ÷ 20 = 2.80 g/cm³

(3) 154.4 ÷ 8 = 19.3 g/cm³(→ 金)

問題2(物質の判別)
体積 25 cm³、質量 67.5 g の金属がある。
  1. この金属の密度はいくらか。
  2. 記事中の表から、この金属は何だと考えられるか。
答えを見る

(1) 密度 = 67.5 ÷ 25 = 2.70 g/cm³

(2) 表より アルミニウム(2.70 g/cm³ と一致)。

問題3(応用)
100 g の鉄(密度 7.87 g/cm³)と、100 g のアルミニウム(密度 2.70 g/cm³)がある。体積はどちらが大きいか、計算で確かめなさい。
答えを見る

体積 = 質量 ÷ 密度 を使う。

鉄の体積:100 ÷ 7.87 = 約 12.7 cm³

アルミニウムの体積:100 ÷ 2.70 = 約 37.0 cm³

よって、アルミニウムのほうが体積は大きい。

※ 同じ質量でも、密度が小さい物質ほどかさばる(体積が大きい)。逆に、同じ大きさなら密度の大きい物質のほうが重い。

まとめ

  • 物質を比べるときは 同じ体積(1cm³)あたりの質量 = 密度 でくらべる。同じ質量でも体積はちがう。
  • 密度 = 質量 ÷ 体積。3つの変形(質量=密度×体積、体積=質量÷密度)も自由に使えるように。
  • 水の密度は 1.00 g/cm³。これより小さい物質は浮き、大きい物質は沈む。
  • 氷が水に浮くのは、氷の密度(0.92)が水の密度(1.00)より小さいから。
  • 不規則な形の物質の体積は メスシリンダー で水位の上がった分から測る(1 mL = 1 cm³)。
  • 密度は物質を見分ける手がかり。温度や状態もそろえて、質量と体積から求めた値を表と比べる。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

死海ではからだが勝手に浮く実生活

中東にある死海は塩分の濃さが約30%もあり、ふつうの海水(約3%)の10倍ほどです。塩がたくさんとけているぶん水の密度が大きく、人のからだの密度より重くなるので、何もしなくても水面にぷかぷか浮いてしまいます。これも「物体の密度が液体の密度より小さければ浮く」というきまりの一例です。

出典:死海 - ウィキペディア(日本語版)

なぜ氷は水に浮くのか(分子のすきま)発展

ふつう物質は固体になると分子がぎっしり並んで密度が大きくなりますが、水はその逆です。氷になると水の分子が4つずつ正四面体の形に手をつなぎ、すきまの多い結晶をつくるため、同じ体積でくらべると液体の水より軽く(密度が小さく)なります。だから氷の密度は0.92g/cm³で、1.00g/cm³の水に浮くのです。

出典:名古屋大学 宇宙地球環境研究所「海洋50のなぜ」

氷が浮くから魚は冬を越せる発展

水は4℃のときに最も密度が大きく重くなり、それより冷たい水は軽くなって上にたまります。だから湖は冷えると表面から凍り、軽い氷がふたのように水面をおおって外の冷気をさえぎります。氷の下の水は凍りきらずに残るので、魚などの生き物は冬のあいだも生きていけるのです。

出典:神戸市水道局 KOBE WATER LABO(こおった湖で魚が生きていられるのはなぜ?)

鉄でできた船が沈まないわけ実生活

鉄の密度は7.87g/cm³で水より大きいのに、鉄の船が浮くのは中身の大部分が空気だからです。船全体(鉄+中の空気)でならした平均の密度が水の1.00g/cm³より小さくなるように作られているので浮きます。浮き沈みは物質そのものではなく、空気もふくめた全体の平均密度で決まるのです。

出典:神戸市水道局 KOBE WATER LABO(鉄の船はどうして浮くの?)

熱気球は空気の密度で空に浮く実生活

熱気球はバーナーで気球の中の空気を温めます。空気は温まると膨張し、同じ体積あたりの重さ(密度)がまわりの冷たい空気より小さくなります。すると気球の中の軽くなった空気と袋の重さを合わせても、まわりの空気より軽くなるため、浮力がはたらいて気球が浮き上がります。

出典:国立大学56工学系学部HP おもしろ科学実験室(安全で簡単な熱気球)

アルキメデスは密度で金を見やぶった発展

古代ギリシャのアルキメデスは、王冠が純金かどうかを調べるよう命じられました。同じ重さでも金より密度の小さい金属が混ざっていると体積が大きくなり、水に沈めたときにあふれる水の量が多くなることに気づいて見やぶったと伝えられます。今でも金属の密度(比重)を比べれば、それが何の金属かを推測できます。

出典:三菱マテリアル GOLDPARK 金の資料館(アルキメデスと金の王冠)