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中学生の学習ノート教科書をもう一段くわしく

ギリシャ・ローマと宗教のおこり

オリンピックが4年に1度開かれるのはなぜでしょうか。起源は今から2800年近く前、古代ギリシャのオリンピアの祭典にさかのぼります。前の記事で見た四大文明と並行して、地中海の周りではギリシャとローマという2つの文明が育ち、同じころアジアでは仏教・キリスト教・イスラム教という3つの宗教が生まれました。この記事では、民主政の始まりから三大宗教のおこりまでを一段くわしく整理します。

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三大宗教の比較 ── 開祖・時期・聖典・日本とのつながり 項目 仏教 キリスト教 イスラム教 開祖 成立時期 地域 聖典 日本との つながり シャカ(釈迦) 前5世紀ごろ インド→東アジア 仏典(経典) 6世紀に伝来 イエス 1世紀 ローマ帝国→世界 聖書 16世紀に伝来 ムハンマド 7世紀 アラビア半島→世界 コーラン 直接伝来なし ※儒学(孔子の教え)は宗教ではなく生き方の教え
仏教・キリスト教・イスラム教を開祖・成立時期・地域・聖典・日本とのつながりで比較した表

3つの宗教は開祖も成立時期もばらばらですが、いずれも今の日本にまでつながる大きな影響を持っています。仏教は6世紀、キリスト教は16世紀に日本へ伝わりましたが、イスラム教は日本へ直接伝わることはありませんでした。

ギリシャ文明 ── ポリスとアテネの民主政

用語:ポリス
古代ギリシャで発達した都市国家。代表的なポリスに、学問・芸術で知られるアテネと、軍事で知られるスパルタがある。ギリシャは1つの国にまとまらず、多くのポリスが並び立った。
用語:アテネの民主政
アテネでは、成年男子の市民が全員参加する直接民主政が行われた。ただし、この「市民」には女性や奴隷はふくまれない点が、今の民主主義との大きな違い。アテネには美しいパルテノン神殿が建てられ、哲学者ソクラテスもこの時代のアテネで活動した。

ギリシャでは4年に1度、ゼウス神をまつるオリンピアの祭典が開かれた。これが今のオリンピックの起源である。

ヘレニズム ── ギリシャ文化が東方へ広がる

用語:ヘレニズム
前4世紀、マケドニアのアレクサンドロス大王が東方へ遠征し、ギリシャから中央アジア・インド北西部まで広がる大帝国を作った。この結果、ギリシャの文化が東方の文化と混ざり合って生まれたのがヘレニズム文化。この文化は、後にインド北西部のガンダーラ美術にも影響を与えたとされる。

ローマ帝国 ── 実用の文化

用語:ローマ帝国
共和政から帝政に移り、地中海を囲む大帝国となったローマ。円形の競技場コロッセオ、水を引く水道橋、各地をつなぐ道路網を整備し、「すべての道はローマに通ず」という言葉が残る。法律の基礎となったローマ法、公用語のラテン語も現代のヨーロッパに影響を残している。
ギリシャとローマ、文化の性格の違い
  • ギリシャ:哲学・彫刻・建築など、学問と芸術にすぐれる。
  • ローマ:道路・水道・法律など、実用と統治の技術にすぐれる。
  • 「ギリシャが考え、ローマが作った」とまとめると、2つの文明の役割の違いが見えやすい。

宗教のおこり ── 仏教・キリスト教・イスラム教

用語:仏教
前5世紀ごろ、インドでシャカ(釈迦)が説いた教え。人はどうすれば苦しみから逃れられるかを説き、のちに東アジア全体に広がった。日本には6世紀ごろに伝わった。
用語:キリスト教
1世紀、イエスがローマ帝国領内で説いた教え。当初は迫害を受けたが、信者を増やしながら広がり、4世紀にローマ帝国の国教となった。教えは『聖書』にまとめられている。
用語:イスラム教
7世紀、アラビア半島のメッカでムハンマドが始めた宗教。教えは『コーラン』にまとめられ、信者はメッカに向かって礼拝する。イスラム教が広がった地域は、のちの十字軍や大航海時代にもつながる、世界史の大きな伏線となる。

なお、前の記事で見た中国の儒学(孔子の教え)は、神を信じる宗教というより、人としての生き方や政治の考え方を説いた教えという点で、この3つの宗教とは性格が異なる。

この章でつまずきやすいところ

ギリシャ・ローマの文明と3つの宗教が続けて出てくるため、名前と特徴が混ざりやすい単元です。読み進める途中で生まれやすい迷いを、具体的にほぐしていきます。

三大宗教の開祖と聖典の組み合わせを取り違える

  • つまずく場面:シャカ・イエス・ムハンマドという3人の名前と、仏典・聖書・コーランという3つの聖典が、テストで逆に結びついてしまいます。
  • 克服のコツ:時代の古い順で覚えるのがコツ。仏教(前5世紀・シャカ・仏典)→キリスト教(1世紀・イエス・聖書)→イスラム教(7世紀・ムハンマド・コーラン)の順に、時代が新しくなるほど開祖の活動した世紀も新しくなる、と一直線に並べて覚えると逆転しません。
  • ミニ例:本文の『コーラン』はイスラム教(7世紀・ムハンマド)の聖典で、いちばん新しく成立した宗教の聖典です。

アテネの民主政を、今の民主主義と同じものだと思い込んでしまう

  • つまずく場面:「民主政」という言葉を見て、今の日本のような「みんなが選挙で代表を選ぶ仕組み」だと思い込み、直接民主政という言葉の意味を読み飛ばしてしまいます。
  • 克服のコツ:2つの違いに注目しましょう。1つ目は「代表を選ぶ」のではなく市民が直接話し合って決める(直接民主政)という仕組みの違い。2つ目は、その「市民」に女性や奴隷はふくまれないという参加資格の違い。「直接参加できたが、参加できる人は限られていた」という2段階で理解すると混同しません。
  • ミニ例:本文のとおり、アテネの民主政に参加できたのは成年男子の市民のみで、女性や奴隷には参加資格がなかった。

ギリシャとローマの文化の性格を反対に覚えてしまう

  • つまずく場面:「コロッセオ」「パルテノン神殿」のように似た響きの建物名が並ぶと、どちらがギリシャの建物でどちらがローマの建物か、また文化の性格(学問芸術か実用か)も逆に覚えてしまいます。
  • 克服のコツ:「考える」か「作る」かで区別しましょう。ギリシャは哲学者ソクラテスに代表される「考える文化」、ローマは水道橋や道路網に代表される「作る文化」。パルテノン神殿(ギリシャ・神への祈りの建物)、コロッセオ(ローマ・実際に使う競技場)と、建物の使われ方でも見分けられます。
  • ミニ例:本文の「すべての道はローマに通ず」という言葉は、実用を重んじたローマの道路網を表す言葉です。

練習問題

問題1(用語)
次の用語の意味を簡潔に答えなさい。
  1. ポリス
  2. アテネの民主政
  3. ヘレニズム
  4. コロッセオ
  5. 仏教
  6. イスラム教
答えを見る

(1) ポリス:古代ギリシャで発達した都市国家。アテネやスパルタなどがある。

(2) アテネの民主政:成年男子の市民が全員参加する直接民主政。女性・奴隷は参加できなかった。

(3) ヘレニズム:アレクサンドロス大王の東方遠征によって生まれた、ギリシャ文化と東方文化が混ざった文化。

(4) コロッセオ:ローマ帝国が建てた円形の競技場。ローマの実用的な建築技術を代表する建物。

(5) 仏教:前5世紀ごろ、インドでシャカ(釈迦)が説いた教え。日本には6世紀ごろ伝わった。

(6) イスラム教:7世紀、アラビア半島でムハンマドが始めた宗教。聖典は『コーラン』。

問題2(年代)
次の出来事を年代の古い順に並べなさい。
  1. ムハンマドがイスラム教を始める
  2. オリンピアの祭典が始まる
  3. イエスの活動
  4. ローマが帝政を始める(アウグストゥス)
  5. アレクサンドロス大王の東方遠征
  6. シャカ(釈迦)の活動
答えを見る

(2) → (6) → (5) → (4) → (3) → (1)

  • (2) オリンピアの祭典が始まる ── 前776年ごろ
  • (6) シャカ(釈迦)の活動 ── 前5世紀ごろ
  • (5) アレクサンドロス大王の東方遠征 ── 前4世紀
  • (4) ローマが帝政を始める(アウグストゥス) ── 前27年
  • (3) イエスの活動 ── 1世紀
  • (1) ムハンマドがイスラム教を始める ── 7世紀
問題3(記述)
アテネの民主政と、現代の民主主義との違いを説明しなさい。
答えを見る

解答例:アテネの民主政は、代表者を選挙で選ぶのではなく、市民が直接集まって話し合い、政治を決める直接民主政だった。しかし、その「市民」には成年男子しかふくまれず、女性や奴隷には参加する権利がなかった。現代の民主主義は、多くの国で選挙によって代表者を選ぶ間接民主政(代表制)が中心であり、参加する権利(選挙権)も性別や身分にかかわらず幅広く認められている点が大きな違いである。

問題4(記述)
仏教・キリスト教・イスラム教の開祖・成立時期・聖典を、それぞれ整理して説明しなさい。
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解答例:仏教は前5世紀ごろ、インドでシャカ(釈迦)が説いた教えで、聖典は仏典(経典)である。キリスト教は1世紀、ローマ帝国領内でイエスが説いた教えで、聖典は聖書である。イスラム教は7世紀、アラビア半島でムハンマドが始めた宗教で、聖典は『コーラン』である。成立した時代の古い順は仏教→キリスト教→イスラム教であり、いずれも発祥地から広い地域へ信仰が広がった点は共通している。

問題5(記述)
ギリシャとローマの文化の特徴の違いを、それぞれ具体例を挙げて説明しなさい。
答えを見る

解答例:ギリシャの文化は、哲学者ソクラテスの思想やパルテノン神殿の建築に見られるように、学問と芸術にすぐれた文化だった。一方、ローマの文化は、円形競技場のコロッセオ、水を運ぶ水道橋、各地を結ぶ道路網に見られるように、実用性と統治の技術にすぐれた文化だった。「ギリシャが考え、ローマが作った」とまとめられるように、ギリシャは学問・芸術、ローマは実用・土木という異なる性格を持っていた。

まとめ

  • ギリシャ文明:都市国家ポリス(アテネ・スパルタ)。アテネでは成年男子市民による直接民主政(女性・奴隷は対象外)。パルテノン神殿・オリンピアの祭典(オリンピックの起源)。
  • ヘレニズム:アレクサンドロス大王の東方遠征(前4世紀)でギリシャ文化が東方へ広がる。ガンダーラ美術にも影響。
  • ローマ帝国:共和政→帝政。コロッセオ・水道橋・道路網など実用の文化。「すべての道はローマに通ず」。
  • 三大宗教:仏教(前5世紀・シャカ・インド)、キリスト教(1世紀・イエス・ローマ帝国領内→4世紀に国教化)、イスラム教(7世紀・ムハンマド・アラビア半島)。
  • 儒学(孔子の教え)は宗教ではなく、生き方・政治の教えという点で三大宗教とは異なる。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

古代オリンピックは1000年以上続いた発展

日本オリンピック委員会(JOC)の解説によると、考古学的な調査では古代オリンピックの起源は前9世紀ごろまでさかのぼる可能性があるとされます。公式な記録が残る最初の大会は前776年で、その後393年ごろまで、4年に1度、1000年以上にわたって続けられました。フランスのクーベルタン男爵がこの古代オリンピックをモデルに近代オリンピックを創設し、1896年に第1回大会がアテネで開かれました。

出典:日本オリンピック委員会(JOC)「1.オリンピックの誕生」

ギリシャの彫刻技法が仏像の姿に影響したガンダーラ美術発展

東京国立博物館の東洋館には、クシャーン朝(1〜3世紀ごろ)のガンダーラ彫刻が所蔵・展示されています。ガンダーラはヘレニズムの影響を受けた地域で、ギリシャの彫刻技法を取り入れた仏像づくりが行われた場所として知られています。この仏像づくりの文化は、シルクロードを通って中国や日本にも伝わっていきました。

出典:東京国立博物館「インド・ガンダーラ彫刻」作品リスト

ローマ2000年の歴史をたどった「永遠の都ローマ展」発展

2023年、東京都美術館では「永遠の都ローマ展」が開催されました。イタリア・カピトリーノ美術館の所蔵品を中心に、ローマの建国から古代の栄光、その後の時代まで、約70点の作品でローマ2000年の歴史と芸術が紹介されました。コロッセオや水道橋を築いたローマの実用文化は、こうした展覧会でも今も紹介され続けています。

出典:東京都美術館「永遠の都ローマ展」