語彙とは ── 単語の集まりを体系で理解する
二字熟語の構成 ── 定番の5パターン
二字熟語(漢字2字の熟語)は、上下の漢字の関係によって、代表的な5つの型に分けられます。
- 似た意味を重ねる ── 同じような意味の漢字を組み合わせる。例「岩石・森林・思考」
- 対になる意味を重ねる ── 反対・対立する意味の漢字を組み合わせる。例「上下・大小・明暗」
- 上が下を修飾する ── 上の漢字が下の漢字の様子・状態を説明する。例「青空(青い空)・美人(美しい人)・急死(急に死ぬ)」
- 主語+述語の関係 ── 上の漢字が主語、下の漢字が述語になる。例「日照(日が照る)・人造(人が造る)・地震(地が震える)」
- 上が下を打ち消す ── 上の漢字(不・非・未・無 等)が下の漢字の意味を否定する。例「不安・非常・未定・無限」
①「勝敗」── 「勝つ」と「敗れる」は反対の意味 → 対になる意味を重ねる
②「国立」── 「国が立てる(設立する)」と読み下せる → 主語+述語の関係
③「無事」── 「無」が「事」を否定している → 上が下を打ち消す
- 教科書によっては、上の漢字が動作、下の漢字がその対象(目的語)になる型(例「登山」=山に登る、「読書」=書を読む)が別に紹介されることもある。
- ここでは中学の教科書で中心的に扱われる代表的な5パターンとして整理した。
三字熟語・四字熟語の組み立て
三字熟語・四字熟語も、二字熟語の組み立てパターンをもとに考えることができます。
三字熟語の代表パターン
- 二字熟語+1字:「積極的(積極+的)」「日本製(日本+製)」
- 1字+二字熟語:「不可能(不+可能)」「高性能(高+性能)」
- 1字が3つ並ぶ:「松竹梅」「雪月花」
四字熟語の代表パターン
- 二字熟語+二字熟語:「起承転結」「春夏秋冬」
- 故事成語からきたもの(由来がある):「五十歩百歩」「漁夫の利」
- 4字全体で1つの意味を表す(分割しにくい):「一石二鳥」「切磋琢磨」
類義語・対義語・多義語
①「かける」── 電話をかける(連絡する)/めがねをかける(身につける)/時間をかける(使う)
②「あがる」── 階段をあがる(上昇する)/面接であがる(緊張する)/料理があがる(完成する)
和語・漢語・外来語の使い分け
日本語の単語には、生まれた由来によって3つのグループがあります。
| 和語 | 漢語 | 外来語 |
|---|---|---|
| やま | 山岳 | マウンテン |
| かわ | 河川 | リバー |
| うみ | 海洋 | シー |
和語は日常会話で使いやすく親しみやすい、漢語は書き言葉や説明文でかたく専門的な印象を与える、外来語は新しい概念を表したり軽やかな響きを出したいときに使われる、という感覚の違いがあります。
慣用句とことわざの違い
- 慣用句は文の中に組み込んで使う決まった言い回し(「油を売っている」のように文の一部になる)。
- ことわざは教訓を含み、それ自体で意味が通じる短文として使われることが多い。
- 「猫に小判」のように、どちらの側面も持つとされる言い回しもある。厳密な線引きより、まずは意味と使われ方の違いをつかむことが大切。
この章でつまずきやすいところ
語彙の単元は、見た目(漢字か・カタカナか)や思い込みで分類してしまいがちです。よくある4つのつまずきを、見分けの手順とともに整理します。
「修飾」型と「主語+述語」型を混同してしまう
- つまずく場面:「日照」を見て、上の漢字「日」が下の漢字「照る」を説明していると思い込み、「明るい照り方」のような修飾の意味に読んでしまう場面。
- 克服のコツ:上下の漢字の間に読み下したときの関係を確かめる。「〜が〜する」と読めれば主語+述語、「〜い・〜な」と読めれば修飾。
- ミニ例:「日照」は「日が照る」(主語+述語)。「青空」は「青い空」(修飾)。読み下し方を確認すれば混同しない。
四字熟語を1字ずつ別々の意味のまま覚えようとしてしまう
- つまずく場面:「一石二鳥」を「一つの石」「二羽の鳥」と別々の意味のまま覚えようとし、全体でどんな意味になるかにつながらない場面。
- 克服のコツ:四字熟語は分割せず、4字全体で1つの意味を表すことが多いと知っておき、由来や例文とセットで覚える。
- ミニ例:「一石二鳥」は石を1つ投げて鳥を2羽落とす様子から、「1つの行動で2つの利益を得る」という意味になる。
類義語はどれも置き換え可能だと思い込んでしまう
- つまずく場面:「うれしい」を「楽しい」に置き換えても意味が変わらないと思い、細かいニュアンスの違いを無視して文章を書いてしまう場面。
- 克服のコツ:類義語は意味が近いだけで、使う場面や気持ちの強さが違うことが多い。実際に例文の中で置き換えて、不自然にならないか確認する。
- ミニ例:「試験に合格してうれしい」は自然だが、「試験に合格して楽しい」は少し不自然。類義語でも場面によって使い分ける。
和語・漢語・外来語を表記だけで判断してしまう
- つまずく場面:カタカナで書かれているから外来語、漢字だから漢語、と表記の見た目だけで判断し、例外の言葉に対応できなくなる場面。
- 克服のコツ:表記だけでなく、言葉の由来(もともと日本語か、中国語からか、他の外国語からか)で考える。基本語のセット(やま=和語、山岳=漢語、マウンテン=外来語)を覚えておくと判断しやすい。
- ミニ例:「かるた」はポルトガル語由来の外来語だが、ひらがなで書かれることが多い。表記だけでは判断できない例として覚えておく。
漢字と書写の基礎
漢字にも、組み立て方・読み方・書き方に共通するルールがあります。ここでは部首・筆順・音訓・送り仮名・書写の基礎を整理します。
部首 ── 漢字を組み立てる部品
| 分類 | 位置 | 代表的な部首 | 例 |
|---|---|---|---|
| へん(偏) | 漢字の左側 | 氵(さんずい) | 海・池 |
| つくり(旁) | 漢字の右側 | リ(りっとう) | 別・利 |
| かんむり(冠) | 漢字の上部 | 艹(くさかんむり) | 花・草 |
| あし(脚) | 漢字の下部 | 心(こころ) | 思・急 |
| たれ(垂) | 上から左下をおおう | 广(まだれ) | 店・広 |
| にょう(繞) | 左から下をおおう | 辶(しんにょう) | 道・進 |
| かまえ(構) | 周りを囲む | 囗(くにがまえ) | 国・囲 |
筆順の原則と画数
漢字を書くときの決まった順序を筆順(書き順)という。主な原則は次のとおり。
- 上から下へ書く ── 例「三」は上の横画から順に書く。
- 左から右へ書く ── 例「川」は左のたて画から順に書く。
- 横画を先に、縦画を後に書く ── 例「十」は横画→縦画の順。
- 中を先に、左右をあとに書く ── 例「小」は中心の縦画→左右のはらいの順。
- 外側を囲む部分を先に書き、中を書いてから最後に閉じる ── 例「国」は外側の囲み→中の「玉」→最後に囲みの下の横画を閉じる。
- 全体をつらぬく画は最後に書く ── 例「中」はたて画で全体をつらぬく画を最後に書く。
- 形が似ている「右」と「左」は、最初の2画の順序が異なる有名な例外。
- 「右」は左はらい(ノ)を先に、横画を後に書く。
- 「左」は横画を先に、左はらい(ノ)を後に書く。
音読みと訓読み
①読んだだけで意味がわかる → 訓読みの可能性が高い(例:「山」=やま)
②読んだだけでは意味がつかみにくく、熟語の中で使われる → 音読みの可能性が高い(例:「山脈」のサン)
1つの熟語の中に音読みと訓読みが混ざる読み方もあります。
重箱読み(音+訓の順)
例:重箱(ジュウ+ばこ)・本箱(ホン+ばこ)・台所(ダイ+どころ)
湯桶読み(訓+音の順)
例:湯桶(ゆ+トウ)・手本(て+ホン)・夕刊(ゆう+カン)
熟字訓
同音異義語と同訓異字
送り仮名の原則
送り仮名は、原則として活用する語(動詞・形容詞・形容動詞)の活用語尾(活用によって形が変わる部分)を送る。
- 動詞:「動く」── 語幹「動」+活用語尾「く」を送る。
- 形容詞:「美しい」── 語幹「美し」+活用語尾「い」を送る(語幹が「し」で終わる形容詞は「し」から送るのが原則)。
書写の基礎知識 ── 楷書と行書
例えば「言」を楷書で書くと3本の横画が1本ずつ独立しているが、行書で書くと横画の一部が点や短い線に省略され、次の画へ続くように書かれる。
敬体と常体 ── 「です・ます」と「だ・である」
- 1つの文章の中では、敬体と常体のどちらかに統一するのが原則。
- 「今日は晴れです。とても気持ちがいい。」のように混ざると、文章が不自然になる。
- 会話文の中の「 」(かぎかっこ)は、地の文の文体と別に、話し手の口調をそのまま書いてよい。
方言と共通語
練習問題
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対になる意味を重ねる
「勝つ」と「敗れる」は反対の意味なので、対になる意味を重ねる型である。
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多義語
1つの単語「かける」が、文脈によって複数の異なる意味(身につける・連絡する・使う)を持っているため。
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「やま」=和語(もともとの日本語)/「山岳」=漢語(中国から伝わった二字熟語)/「マウンテン」=外来語(英語 mountain から入った言葉)
まとめ
- 二字熟語の構成は似た意味・対になる意味・修飾・主語+述語・打ち消しの5パターンが代表的。
- 三字熟語・四字熟語も、二字熟語の組み立てパターンを土台に考えられる。
- 類義語は意味が似ているが完全に同じではなく、対義語は反対・対になる言葉、多義語は1つの単語が複数の意味を持つ言葉。
- 和語(もとの日本語)・漢語(中国から)・外来語(他の外国語から)は、由来によって響き・使われる場面が異なる。
- 慣用句は決まった言い回し、ことわざは教訓を含む短文。使われ方に注目して見分ける。
- 部首は漢字の意味・成り立ちのまとまりで、へん・つくり・かんむり・あし・たれ・にょう・かまえの7分類がある。筆順には上から下、左から右などの原則があり、「右」「左」は例外。
- 音読みは中国伝来の発音、訓読みは意味に当てた日本語の読み。熟字訓は熟語全体に特別な読みをあてたもの。
- 同音異義語・同訓異字は文脈で漢字を判断し、送り仮名は活用語尾を送るのが原則。書写では楷書と行書で点画の連続・省略が異なる。
- 敬体(です・ます)と常体(だ・である)は1つの文章の中で統一する。
- 方言(地域の言葉)と共通語(全国に通じる言葉)は、場面に応じて使い分ける。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
国は分かりにくい外来語を「言い換え」提案してきた発展
国立国語研究所は2002年8月に「外来語」委員会を設置し、行政白書や新聞などで使われるものの定着が不十分な外来語について、分かりやすい言い換えや説明を加える提案を行いました。2006年3月までに4回にわたって行われたこの提案では、あわせて176語の外来語が対象になりました。カタカナ語をそのまま使うか、和語・漢語に言い換えるかは、今も社会の中で意識的に選ばれています。
類義語を整理した「分類語彙表」という辞典がある発展
国立国語研究所は、意味の近い言葉をグループごとに分類した『分類語彙表』を編集・公開しています。1964年に初版が出版され、その後の増補改訂版では収録語数を初版の約3倍に増やし、延べ約9万6千語を収録しました。類義語を「似ているけれど何が違うのか」で調べるための基礎資料として、辞典作りや言葉の研究に使われています。
