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基本的人権 ── 5つの権利

人は生まれた瞬間から、すべての人が 等しく持っている権利があります。それが基本的人権。日本国憲法ではこれを 「侵すことのできない永久の権利」として保障。5つの大きな権利を整理します。

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基本的人権の5分類と「新しい人権」 基本的人権 第11条「侵すことのできない永久の権利」 憲法に明記された5つの権利 平等権 第14条 法の下の平等 人種・信条・性別 などで差別されない 男女・両性の平等 自由権 精神の自由 身体の自由 経済活動の自由 「国家からの自由」 18世紀に確立 社会権 第25条 生存権 教育を受ける権利 勤労の権利 労働基本権 「国家による自由」 20世紀に登場 参政権 選挙権(18歳以上) 被選挙権(25・30歳) 最高裁の国民審査 憲法改正の国民投票 政治に参加する権利 請求権 裁判を受ける権利 国家賠償請求権 刑事補償請求権 請願権 人権を守るための権利 + 新しい人権 ── 憲法に明記されていない プライバシー権・環境権・知る権利・自己決定権 情報化や公害など、社会の変化を背景に後から主張されるようになった
基本的人権の5分類(憲法に明記)と、憲法に明記されていない「新しい人権」

5分類は「国家からの自由(自由権・18世紀)」と「国家による自由(社会権・20世紀)」の対比で整理すると覚えやすくなります。点線枠の「新しい人権」が憲法に明記されていないことも、テストで問われるポイントです。

基本的人権の5種類

分類
基本的人権の5分類

① 平等権:法の下の平等

② 自由権:身体・精神・経済の自由

③ 社会権:人間らしい生活を送る権利

④ 参政権:政治に参加する権利

⑤ 請求権:人権を守るための権利

① 平等権

  • 「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、差別されない」(第14条)
  • 男女平等・両性の平等 ── 男女雇用機会均等法(1985年制定。雇用における男女差別を禁止)や男女共同参画社会基本法(1999年制定)などの法律で実現がめざされている
  • 部落差別、外国人差別など、差別をなくすための取り組み。部落差別については2016年制定の部落差別解消推進法で解消に向けた取り組みが進められている
  • アイヌ民族は、2019年制定のアイヌ施策推進法で初めて「先住民族」と法律に明記され、差別の解消と文化の振興が図られている

② 自由権

  • 身体の自由:奴隷的拘束の禁止、適正手続きの保障
  • 精神の自由:思想・良心の自由、信教の自由、表現の自由、学問の自由
  • 経済の自由:居住・移転・職業選択の自由、財産権

③ 社会権 ── 20世紀的人権

用語
社会権
「人間らしい生活」を国家が保障する権利。福祉国家の理念。
  • 生存権:「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(第25条)
  • 教育を受ける権利:義務教育は無償
  • 勤労の権利:労働の機会、職業安定
  • 労働基本権:団結権・団体交渉権・団体行動権

④ 参政権

  • 選挙権:18歳以上の国民が選挙で投票
  • 被選挙権:衆議院議員25歳以上、参議院議員30歳以上
  • 国民審査:最高裁判所裁判官を辞めさせる
  • 国民投票:憲法改正の最終決定

⑤ 請求権

  • 裁判を受ける権利
  • 国家賠償請求権:国の不法行為に対して
  • 請願権:国・地方公共団体に意見を述べる
  • 刑事補償請求権:無罪判決の場合の補償

公共の福祉と人権の制限

公共の福祉

人権も 「公共の福祉」の範囲内で行使される。他人の権利を侵してはならない。

例:表現の自由 → 名誉毀損は禁止

例:職業選択の自由 → 医師は国家資格が必要

つまずきポイント:公共の福祉は「国の都合」ではない
  • 公共の福祉は、他人の人権とぶつかるときに調整する考え方。
  • 国が何でも自由に人権を制限できる、という意味ではない。
  • 制限する場合も、目的が正当で、必要な範囲に限られることが重要。

新しい人権

用語
新しい人権
憲法には明記されていないが、社会変化により認められるようになった人権。
  • プライバシー権:個人情報の保護
  • 環境権:良い環境で生活する権利
  • 知る権利:情報公開を求める権利
  • 自己決定権:医療・尊厳死など

国民の義務

  • 子どもに教育を受けさせる義務
  • 勤労の義務
  • 納税の義務
つまずきポイント:人権の発展段階
  • 18世紀(自由権):「国家からの自由」(縛らないでくれ)
  • 20世紀(社会権):「国家による自由」(助けてくれ)
  • 現代(新しい人権):プライバシー権、環境権など
  • 人権は 時代とともに広がる。

この章でつまずきやすいところ

「平等権・自由権・社会権・参政権・請求権」の5つが並ぶ単元です。さらに憲法に明記されていない「新しい人権」や、権利と対になる「国民の義務」も出てくるため、本文を読み進める途中で、どの権利がどの場面のものか分からなくなる瞬間が多くなります。読みながら迷いやすいポイントを先に整理します。

自由権と社会権を「どっちも自由っぽい権利」と混ぜてしまう

  • つまずく場面:本文で「身体の自由」「生存権」が続けて出てきたとき、どちらも生活を守る権利に見えて、自由権と社会権の区別が頭の中でぼやけてしまう場面。問題で「自由権はどれか」と問われた瞬間に手が止まりやすいです。
  • 克服のコツ:教科書の分類で押さえます。自由権は「精神の自由・身体の自由・経済活動の自由」の3分野で国家の干渉を受けない権利(国家からの自由)、社会権は「生存権・教育を受ける権利・勤労の権利・労働基本権」で国家に保障を求める権利(国家による自由)です。語尾の「干渉されない/保障する」は補助的な手がかりとして、まず本文がどの分野の話かを先に判定すると迷いません。
  • ミニ例:本文の「思想・良心の自由」は精神の自由なので自由権。一方、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」は生存権にあたるので社会権です。

「公共の福祉」を「国が人権を制限してよい根拠」と読み違える

  • つまずく場面:「人権も公共の福祉の範囲内で行使される」という一文を読んだとき、国が都合で人権を抑えてよいという意味に取ってしまい、自由権の説明と矛盾して感じてしまう場面。つまずきポイントの注意書きまで読まずに先に進みがちです。
  • 克服のコツ:因果関係で押さえます。公共の福祉は「人権どうしがぶつかったときの調整役」であり、国の都合ではありません。教科書では、制限が認められるのは他人の人権とぶつかる場面に限られると整理されます。読みながら「誰の権利とぶつかっているか」を必ず確認しましょう。
  • ミニ例:表現の自由を理由にしても、他人の名誉を傷つける表現は認められません。これは国の都合ではなく、名誉という他人の人権とぶつかるための調整、と本文は整理しています。

「新しい人権」を憲法に書いてある権利と思い込んで読む

  • つまずく場面:本文の流れで5分類のあとに「プライバシーの権利」「環境権」「知る権利」などが出てきたとき、これらも憲法に条文があると思い込んでしまう場面。問題で「憲法に明記されている権利はどれか」と問われると、新しい人権を選びかけて迷います。
  • 克服のコツ:時代背景で整理します。自由権は18〜19世紀の市民革命の中で、社会権は20世紀(1919年のワイマール憲法以降)に、そして新しい人権は20世紀後半以降の情報化や環境問題などの社会変化の中で主張されてきた、という流れを意識すると、新しい人権が後から認められてきた権利で憲法には明記されていないと押さえられます。本文中の「明記されていない」という一語を見落とさないことがコツです。
  • ミニ例:プライバシーの権利・環境権・知る権利・自己決定権などは、情報化や公害といった社会変化を背景に主張されるようになった権利で、教科書では「新しい人権」として5分類とは別枠に整理されています。

「権利」と「義務」を混同して国民の義務を権利の続きで覚えてしまう

  • つまずく場面:本文の終盤で「子どもに教育を受けさせる義務」「勤労の義務」「納税の義務」が出てきたとき、直前の社会権の「教育を受ける権利」「勤労の権利」と並んでいるため、どちらが権利でどちらが義務か頭の中で入れ替わってしまう場面。
  • 克服のコツ:教育と勤労は語尾ルールが違うので別建てで覚えます。教育は「受ける権利/受けさせる義務」と語尾が対になり、子ども側=受ける権利/保護者側=受けさせる義務と立場が逆になります。一方勤労は語尾では区別できず、「勤労の権利=働く機会を保障される」「勤労の義務=働いて社会に貢献する」と意味で分けます。納税は義務側だけにあると押さえます。
  • ミニ例:本文では、子どもには「教育を受ける権利」があり、保護者には「子どもに教育を受けさせる義務」があると区別されます。勤労については、「勤労の権利」と「勤労の義務」が別物として並んでいる点に注意しましょう。

練習問題

問題1(5分類)

次は5つの権利のどれか。

  1. 選挙権
  2. 生存権
  3. 表現の自由
  4. 男女平等
  5. 裁判を受ける権利
答えを見る

(1) 参政権 (2) 社会権 (3) 自由権 (4) 平等権 (5) 請求権

問題2(新しい人権)

「個人情報を守る権利」は何と呼ばれるか。

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プライバシー権

問題3(義務)

国民の3つの義務を答えよ。

答えを見る

子どもに教育を受けさせる義務/勤労の義務/納税の義務

問題4(説明)

「公共の福祉」によって人権が制限されるのは、どのような場合か。例をあげて説明しなさい。

答えを見る

例:自分の表現の自由を理由に、他人の名誉を傷つけることは認められない。公共の福祉とは、国の都合ではなく、人権どうしが衝突したときに互いの権利を調整する考え方である。

まとめ

  • 基本的人権は5種類:平等権・自由権・社会権・参政権・請求権。
  • 自由権は3つ:身体・精神・経済。
  • 社会権の中心は 生存権(憲法25条)。
  • 公共の福祉は、他人の人権との衝突を調整する考え方。
  • 新しい人権:プライバシー権・環境権・知る権利・自己決定権。
  • 3つの義務:教育・勤労・納税。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

選挙権が18歳以上に(参政権の広がり)時事

公職選挙法が改正され、2016年6月19日以降の国政選挙から選挙権年齢が満20歳以上から満18歳以上に引き下げられました。これにより約240万人の18・19歳が新たに有権者となり、参政権を行使できる人の範囲が広がりました。被選挙権の年齢(衆議院25歳・参議院30歳)とは別である点に注意しましょう。

出典:総務省

こども基本法とこども家庭庁(子どもの人権)時事

2023年4月1日、子どもの権利を社会全体で守るための「こども基本法」が施行され、同時に「こども家庭庁」が発足しました。この法律は日本国憲法と子どもの権利条約の精神にもとづき、すべての子どもの基本的人権が保障され、一人ひとりが個人として尊重されることを基本理念としています。

出典:こども家庭庁

事業者の「合理的配慮」が義務に(平等権の前進)時事

改正された障害者差別解消法が2024年4月1日に施行され、お店や会社などの事業者にも障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務づけられました。合理的配慮とは、障害のある人から申し出があったとき、負担が重すぎない範囲で社会の中の壁(バリア)を取り除く対応をすることです。差別をなくし、ともに生きる共生社会をめざす取り組みの一つです。

出典:内閣府

子どもの権利条約(人権の国際的な保障)発展

基本的人権は日本国憲法だけでなく、国際的な条約でも守られています。子どもの権利条約は1989年に国連で採択され、18歳未満を「権利をもつ主体」として位置づけ、差別の禁止や子どもの最善の利益などを定めています。日本は1994年にこの条約を批准しています。

出典:日本ユニセフ協会

AI時代のプライバシーと「新しい人権」発展

新しい人権の一つであるプライバシー権は、AIの普及で改めて注目されています。個人情報保護委員会は2023年、文章や画像を作る生成AIサービスについて、本人の同意なく、病歴や信条などの特に配慮が必要な個人情報(要配慮個人情報)を取得しないよう注意喚起を行いました。技術の進歩に合わせて、個人情報をどう守るかが現代の課題になっています。

出典:個人情報保護委員会