図でつかむ
この図は、式や定理を読む前に全体像をつかむための補助図です。問題を解くときも、まず同じような簡単な図を自分で描いてから条件を書き込むと、見落としが減ります。
三角形の中の平行線の定理
DE ∥ BC ⇔ AD:DB = AE:EC(または AD:AB = AE:AC = DE:BC)
DE ∥ BC なら、△ADE ∽ △ABC(2角:同位角と共通角)
相似 → 対応する辺の比が等しい
→ AD:AB = AE:AC = DE:BC
2 種類の比 ── どちらでも同じ事実
- AD:AB = AE:AC(小さな△と大きな△の比)
- AD:DB = AE:EC(同じ辺上の上下の比)
- どちらでも結論は同じ。問題によって使いやすい方を選ぶ。
例題で確認
AD:DB = AE:EC → 4:6 = 6:EC
4·EC = 36 → EC = 9
AD:AB = DE:BC → 3:8 = DE:10
8·DE = 30 → DE = 15/4
逆も成り立つ ── 比が等しい → 平行
「AD:DB = AE:EC ならば DE ∥ BC」も成り立つ。証明問題で「平行であることを示せ」と言われたら、この逆を使う。
AD:DB = 4:6 = 2:3、AE:EC = 6:9 = 2:3
比が等しい → DE ∥ BC
3本の平行線と線分の比
ℓ ──A──D── ← 平行線
m ──B──E──
n ──C──F──
AB:BC = DE:EF が成り立つ。
AB=3, BC=5, DE=6 → EF は?
3:5 = 6:EF → 3·EF = 30 → EF = 10
中点と平行 ── 中点連結定理(次回詳細)
三角形の2辺の中点を結ぶ線分は、もう1辺と 平行で長さが半分。これも平行線と線分の比の特殊な場合。
平行線と比の応用問題
台形 ABCD(AD ∥ BC)の対角線 BD、AC 上に交点 P を考える
対角線の交点で、△APD ∽ △CPB(2角の相似)
→ AP:PC = DP:PB = AD:BC
→ 台形の問題は 相似な三角形を見つけるのがコツ
等積変形と比
- 三角形を 底辺を共通にして頂点を平行線上で動かすと面積は不変
- 「面積が等しい三角形を作れ」と言われたら、底辺と頂点の関係を見る
- 2つの三角形が底辺を共有 → 高さの比で面積比
- 2つの三角形が高さを共有 → 底辺の比で面積比
面積比と長さの比の関係
辺の比 a:b → 面積比 a²:b²
辺の比 a:b → 体積比 a³:b³
例:相似な三角形で辺の比 2:3 → 面積比 4:9
例:相似な立方体で辺の比 1:2 → 体積比 1:8
- AD:DB(同じ辺の上下)と AD:AB(全体と部分)は別物。
- DE と BC の比は 「全体と部分」の比 AD:AB と等しい。
- 図にどの比を使うか、書き込みながら解く。
- 「平行ならば比が等しい」(順)
- 「比が等しいならば平行」(逆)
- 両方とも成り立つ(必要十分条件)
- 証明問題では問われた方向で使う
- 3本以上の平行線でも同じ性質が成り立つ
- 左の直線で切られた比 = 右の直線で切られた比
- 平行線が 3本以上でも、各「区間の比」が等しい
- 4本5本でも同様
この章でつまずきやすいところ
平行線と線分の比は、図を見ながら「どの比とどの比が等しいのか」を判断するところでつまずきやすい単元です。ここでは、本文を読みながら、または問題図を眺めながら頭の中で迷う場面を取り上げ、迷いを抜け出す手がかりを整理します。
AD:DB と AD:AB を同じ比だと思い込んでしまう
- つまずく場面:本文で「AD:DB = AE:EC」と「AD:AB = DE:BC」が続けて出てきた瞬間、どちらも同じ意味に見えてきて、問題図で DE の長さを求めようとしたときに、つい AD:DB の比を DE:BC に当てはめてしまう場面です。
- 克服のコツ:位置関係で見分けるのがコツです。AD:DB は「辺 AB を D で分けた2つの部分どうしの比(部分:部分)」、AD:AB は「部分と全体の比」。DE と BC を比べるときは BC が大きな三角形の辺なので、相方も「全体側」の AD:AB の方を選ぶ、と図に矢印で書き込みます。
- ミニ例:AD=3, AB=8, BC=10 で DE を求めるとき、DE と BC は全体側どうしなので AD:AB = DE:BC を使い、3:8 = DE:10 となります。AD:DB = 3:5 と混同しないよう、図の AB の横に「全体」と書き込んでおきます。
平行と書かれていないのに比の定理を使ってしまう
- つまずく場面:問題文に「DE ∥ BC」と書かれていないのに、図の中で D と E が辺の途中にあるのを見ると、本文の図1がよぎって、つい AD:AB = AE:AC が成り立つと思い込んで比例式を立てに走ってしまう場面です。
- 克服のコツ:因果関係を順序で確認するのがコツです。教科書では「平行 → 比が等しい」「比が等しい → 平行」の二方向があり、どちらも前提が要ります。逆向き(比から平行を導く)を使うときは、教科書の形「AD:AB = AE:AC ならば DE ∥ BC」に比をそろえてから判定する、とルールを決めておきます。
- ミニ例:AD=6, AB=10, AE=9, AC=15 と長さだけ与えられた問題では、平行とは書かれていないので、まず AD:AB = 6:10 = 3:5、AE:AC = 9:15 = 3:5 と部分:全体の形で確かめ、教科書の逆定理「AD:AB = AE:AC ならば DE ∥ BC」から DE ∥ BC と結論します。
対応する三角形が決まらないまま比例式を作ろうとする
- つまずく場面:台形 ABCD の対角線が交わる図を見たとき、本文では「相似な三角形を見つけるのがコツ」と書いてあるのに、どの三角形とどの三角形を組にすればよいかが見えず、辺の名前を眺めたまま比例式が立てられず手が止まる場面です
- 克服のコツ:見分け方の手順として、まず平行な辺(ここでは AD ∥ BC)の両端から対角線をたどり、交点 P を挟んで向かい合う2つの三角形を指でなぞります。次に同位角・対頂角で2角が等しいことを確認してから、対応辺どうしで比例式を作る、と決めておきます。
- ミニ例:台形 ABCD(AD ∥ BC)で対角線の交点を P とすると、△APD と △CPB は2組の角がそれぞれ等しいので相似です。よって AP:CP = DP:PB = AD:CB となり、AD と BC(CB)のように平行な辺どうしが比の相方になります。
3本の平行線で、横の長さどうしを比べてしまう
- つまずく場面:本文の「ℓ ∥ m ∥ n に2直線が交わる」イメージ図を見たとき、AB:BC = DE:EF と書かれているのに、図を見ると AB と DE が横に並んで見えるので、つい「AB と DE は同じ長さだろう」と思い込んだり、AB と DE の差を取って考えに走ってしまう場面です。
- 克服のコツ:位置関係を「縦に切る」で固定するのがコツです。3本の平行線の間にできるのは「ℓ と m の間」「m と n の間」という縦方向の区間。左の直線の区間比と右の直線の区間比が等しい、と読み替え、必ず「左の上:左の下 = 右の上:右の下」の形で書きます。AB と DE のように異なる直線の上下を直接比べないと決めておきます。
- ミニ例:AB=3, BC=5, DE=6 のとき EF を求める問題では、左の縦の区間比 3:5 と右の縦の区間比 6:EF をそろえ、3:5 = 6:EF となります。内項・外項の積から 3·EF = 5·6 = 30, よって EF = 10。AB と DE の長さを直接比べたり差を取ったりするのではない点に注意します。
練習問題
△ABC で DE ∥ BC、AD=5, DB=10, AE=4 のとき EC を求めよ。
答えを見る
5:10 = 4:EC → 5·EC = 40 → EC = 8
△ABC で DE ∥ BC、AB=12, AD=4, BC=15 のとき DE は。
答えを見る
AD:AB = DE:BC → 4:12 = DE:15 → DE = 5
△ABC で、AD=6, DB=4, AE=9, EC=6。DE と BC は平行か。
答えを見る
AD:DB = 6:4 = 3:2、AE:EC = 9:6 = 3:2 → 比が等しい → 平行
3本の平行線 ℓ ∥ m ∥ n を2本の直線が切る。一方で AB=4, BC=6、もう一方で DE=6 のとき EF。
答えを見る
4:6 = 6:EF → EF = 9
まとめ
- 三角形の中に底辺と平行な線:AD:DB = AE:EC または AD:AB = DE:BC。
- 逆も成り立つ:比が等しい → 平行。
- 3本の平行線:左の比 = 右の比。
- 問題では 「同じ辺の上下」と 「全体と部分」のどちらの比かを意識。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
影でピラミッドの高さを測ったタレス実生活
棒と影の長さが同じになる時間帯に着目すると、棒・影・太陽光は直角二等辺三角形をつくり、同じ太陽光で生まれるピラミッドと影も相似な三角形になります。古代ギリシャのタレスはこの相似の性質を使い、登らずにピラミッドの影の長さからその高さを求めたと伝えられています。
三角測量 ── 行けない場所までの距離を計算する発展
ある辺の長さとその両端の角度がわかれば、直接行けない点までの距離を計算できる方法を三角測量といい、相似や三角形の性質を土台にしています。タレスの影の手法が発展したもので、現在も測量の基本原理として受け継がれています。
日本中の地図は三角点のネットワークでできている実生活
国土地理院は、見晴らしのよい場所に緯度・経度を正確に求めた基準点「三角点」を全国に約11万点設けています。まず一等三角点で日本列島の大枠を測り、その近くの点から二等・三等と順に位置を決めていく、三角形を積み重ねる考え方で正確な地図がつくられてきました。
出典:国土地理院「三角点とは」
地図の縮尺は相似比そのもの実生活
地図の「縮尺」は実際の距離と地図上の距離の比で、これは拡大図・縮図の相似比と同じ考え方です。たとえば2万5千分の1の地形図では地図上の4cmが実際の1km(1000m)にあたり、相似な縮図だからこそ地図から本当の距離を読み取れます。
カメラに写る像の大きさも比で決まる発展
小さな穴から光を通して像を映すピンホールカメラでは、物体と像が相似な三角形をつくります。物体までの距離Z、カメラの奥行き(焦点距離)f に対して、物体の大きさYと像の大きさyは Y:y = Z:f という比の関係になり、遠いものほど小さく写る理由がこの相似で説明できます。
