全数調査と標本調査
全数調査:対象すべてを調べる。例:国勢調査、健康診断、学校のテスト
標本調査:対象の一部を取り出して調べ、全体を推定する。例:視聴率、世論調査、製品の品質検査
標本調査の用語
- 母集団:調査の対象全体(例:日本人有権者全体)
- 標本(サンプル):母集団から取り出した一部(例:1000人)
- 標本の大きさ:標本に含まれる個数(例:1000)
- 無作為抽出:偏りなく標本を取り出すこと(くじ引きや乱数表)
標本調査が必要な場面
- 全数調査が 不可能:池の魚の数、海の魚の漁獲量
- 全数調査が 非現実的:膨大な人数のアンケート、製品の破壊検査
- 全数調査が コスト的に無理:1日2回でも莫大な費用がかかる
推定の基本 ── 比例で推定する
標本の中の割合 ≈ 母集団の中の割合
標本での比率を、そのまま全体に拡大する。
袋の中に白と黒の玉が合計300個。30個取り出したら白が12個。袋の中の白の総数は?
標本中の白の割合:12/30 = 2/5
推定:300 × 2/5 = 120個
池の魚を100匹捕まえて印をつけ、再放流。後日250匹捕まえたら、印つきは20匹。池の魚の総数は?
再捕獲の中の「印つき」の割合:20/250 = 4/50
→ 池全体でも同じ割合:100 / N = 20 / 250 → N = (100·250)/20 = 1250匹
視聴率・選挙世論調査
テレビ視聴率は、全国の世帯から 無作為に選ばれた数千世帯を継続的に調査。その世帯の視聴行動を「全世帯の傾向」として推定する。
標本の偏りを避けるため、地域・年齢・家族構成が均等になるよう抽出される。
標本の取り方(無作為抽出)
- くじ引き:全員に番号をつけて、ランダムに引く
- 乱数表:書籍の乱数表を使って番号を選ぶ
- コンピュータ乱数:プログラムでランダム番号を発生
- 大事なのは「偏らないこと」。例:学校で生徒を調査する場合、出席番号順や、男子だけ・女子だけにすると偏る。
標本の大きさと精度
標本が 大きいほど推定の精度が上がるが、コストも増える。実際の調査では、必要な精度と費用のバランスで決める。
調査の種類の判別
| 調査の例 | 全数 or 標本 | 理由 |
|---|---|---|
| 国勢調査 | 全数 | 国民全員を対象 |
| テレビ視聴率 | 標本 | 全世帯は不可能 |
| 学校の身体測定 | 全数 | 生徒全員 |
| 政党支持率 | 標本 | 全国民は不可能 |
| 選挙の出口調査 | 標本 | 素早く結果予測 |
| 製品の不良品検査 | 標本 | 全数だと壊して検査 |
| 魚の生息数 | 標本 | 水中で全部数えられない |
| 学校の試験 | 全数 | 全員が受験対象 |
標本の選び方の重要性
偏った例1:朝の駅で「通勤時間」を聞く → 通勤者ばかりで偏る
偏った例2:SNSで「政治意見」を聞く → ネット利用層に偏る
偏った例3:男子高校だけで「中学生の意識」を聞く → 男女偏る
→ 無作為抽出が大切。偏りなく標本を選ぶこと。
→ 偏った標本では 正確な推定ができない
身近な標本調査の規模感
- テレビ視聴率:全世帯ではなく、選ばれた一部の世帯から推定する
- 世論調査:全国から無作為に選んだ一部の人に質問する
- 選挙の出口調査:投票した人の一部に聞き、全体の傾向を早く推定する
- 品質検査:製品の一部を抜き取って、不良品の割合を推定する
- 標本の大きさは調査の目的・費用・必要な精度で変わる
- 標本調査の問題は、ほとんどが 比例式で解ける。
- 「標本:母集団 = 標本中の数:母集団中の数」
- 例:1000個中に不良品が15個 → 全体30000個中の不良品 = 30000 × 15/1000 = 450個
- 推定値は 「およそ◯◯」と答える
- 「正確に◯◯個」ではない(推定だから)
- 整数で答える(小数点以下は四捨五入)
- N(総数)× m(後で印つき)= M(最初印つき)× n(後で全部)
- → N = (M × n) / m
- 例:100匹に印、後日200匹中20匹印 → N = 100·200/20 = 1000匹
- 式を覚えて、当てはめて計算する
この章でつまずきやすいところ
標本調査の本文を読んでいる途中、「無作為ってどう違うの?」「比例式の左右どっちに何を置く?」と手が止まりがちです。ここでは読みながら詰まりやすい4つの場面を、見分け方の手がかりとともに整理します。
標本の人数をそのまま全体の人数だと思い込んでしまう
- つまずく場面:「30個取り出したら白が12個」と読んだ瞬間、頭の中で「じゃあ全体の白は12個」と止まってしまう場面。標本での個数を、母集団での個数だと直結させて読んでしまい、比例で広げる発想が抜け落ちる。
- 克服のコツ:位置関係で整理する。標本は母集団の中の小さな箱で、母集団は大きな箱。同じ「数」でも所属する箱が違うので、まず「これは小さな箱の中の数か、大きな箱の中の数か」を読みながら指さして区別する。比例式は箱の大きさの比と中身の比が等しい、と捉え直す。
- ミニ例:袋全体300個・取り出した30個に白12個。小さな箱(30個)での白の割合が12/30で、それを大きな箱(300個)に広げて 300×12/30=120個と推定する(およそ120個)。
「無作為」を「適当に選ぶ」と思い込んでしまう
- つまずく場面:本文の「無作為抽出」を読んで、「ようするに目についた人を選べばいいんだ」と解釈してしまう場面。朝の駅や街頭アンケートの例を読み流したまま「偏り」と「無作為」の差がぼんやりして、なぜダメなのか説明できなくなる。
- 克服のコツ:因果関係で押さえる。選び方の偏りが原因で推定のズレという結果が生まれる、という流れ。「無作為」は誰が選んでも同じ確率で当たる仕組みのことで、くじ引き・乱数表・コンピュータ乱数のように人の好みが入らない手順であるかどうかを基準に判定する。
- ミニ例:朝の駅で通勤時間を聞くと通勤者ばかり集まる。これは選び方の偏りが原因で、全体の傾向とズレた結果になる。一方、全員に番号をつけてくじ引きで選べば無作為抽出になる。
捕獲再捕獲法で印つきの数と全体の数を取り違えてしまう
- つまずく場面:「100匹に印、後日250匹中20匹が印つき」と読みながら、どれが分子でどれが分母か分からなくなる場面。M・N・m・n が登場した瞬間、文字の対応関係が頭の中で入れ替わってしまい、式に当てはめる前で手が止まる。
- 克服のコツ:時系列で整理する。最初に印をつけて放した数=M、あとで捕まえた全体数=n、そのうちの印つき=m、求めたい池全体=N。式は「池全体での印つきの割合 = 再捕獲の中の印つきの割合」、つまり M/N = m/n と読み替えると、上下の対応が見えやすい。教科書によっては N:M=n:m の形で書く場合もあるが、印つきの割合が等しいという考え方は同じ。
- ミニ例:最初に100匹に印(M=100)。後日250匹(n=250)を捕まえ印つき20匹(m=20)。100/N = 20/250 から N = 100×250÷20 = 1250匹と推定する。
推定値を正確な数値だと思い込んでしまう
- つまずく場面:比例式で「450個」「1250匹」と数字が出た瞬間、「これが正解だ」と書き写してしまう場面。本文の「およそ」「誤差を含む」を読み飛ばしてしまい、推定と確定値の境目があいまいなまま答えを書いてしまう。
- 克服のコツ:見分け方で押さえる。全数調査の結果は確定値、標本調査の結果は推定値で必ず誤差を含む、と区別する。答えの前に「これは標本から計算した数か」と一度立ち止まり、その場合はおよそ○○個のように丸めて書く。丸め方は問題の指示にしたがって四捨五入する(整数までか、上から2桁の概数かなどは問題文に従う)。
- ミニ例:1000個中の不良品15個から全体30000個の不良品を推定して450個と出たら、およそ450個と書く。標本から導いた数は確定値ではなく推定値であることを示す書き方。
練習問題
赤と白の玉が混ざった袋。50個取り出したら赤が30個。袋全体が500個のとき、赤の総数の推定は。
答えを見る
500 × 30/50 = 300個
池の魚 150匹を捕まえて印をつけて放した。1か月後、200匹を捕まえたら印つきが 12匹だった。池の魚の総数を推定せよ。
答えを見る
(150·200) / 12 = 2500匹
1日10000個生産される製品から、ランダムに 500個取り出して検査したら不良品が 8個。1日の不良品数を推定。
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10000 × 8/500 = 160個
- 全国の有権者の投票傾向を1000人に聞く。母集団・標本・標本の大きさ・調査方法は。
- 学校の生徒全員の体力測定。これは全数調査か標本調査か。
答えを見る
(1) 母集団=全有権者、標本=1000人、標本の大きさ=1000、標本調査
(2) 全数調査
まとめ
- 全数調査:対象すべて。標本調査:一部から全体を推定。
- 用語:母集団/標本/標本の大きさ/無作為抽出。
- 推定の原理:標本中の割合 ≈ 母集団中の割合。
- 計算は基本的に 比例式で解く。
- 身近な例:視聴率、世論調査、池の魚(捕獲再捕獲法)、品質検査。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
国勢調査は全数調査、視聴率は標本調査実生活
国勢調査は日本に住むすべての人と世帯を対象にする全数調査で、5年に1度行われます。全数調査は誤差なく正確ですが膨大な費用と手間がかかるため、視聴率や世論調査のように対象が多すぎる場合は、一部だけ調べて全体を推定する標本調査が使われます。
テレビ視聴率は関東2700世帯から全国を推定実生活
ビデオリサーチの関東地区の視聴率調査は、1都6県にある約1800万世帯のうちわずか2700世帯だけを標本として測定し、全世帯の傾向を推定しています。全国では32地区・合計10800世帯で調査が行われ、これは数学で学ぶ「一部から全体を推定する」標本調査そのものです。
視聴率世帯はくじ引きではなく「系統抽出法」で選ぶ発展
視聴率の調査世帯は、住民基本台帳の全世帯に通し番号をつけ、一定の間隔ごとに世帯を選ぶ「系統抽出法」で抽出されます。たとえば60万世帯から200世帯選ぶなら3000ずつ間隔をあけ、最初の1世帯だけ乱数で決めるしくみで、偏りなく無作為に選ぶ工夫です。
野生動物の数を数える標識再捕獲法発展
野生動物は逃げたり隠れたりするため全部を数えることはできず、研究者は教科書の池の魚と同じ標識再捕獲法を使います。一部を捕まえて目印をつけて放し、後で再び捕まえたときの目印つきの割合から全体の個体数を逆算するしくみです。
標本調査には必ず「標本誤差」がある発展
標本調査は全数調査と違い、一部しか調べないため必ず標本誤差が生じます。そのため結果は「およそ」と推定で答え、誤差を小さくするには標本に偏りが出ないよう無作為に選ぶことが重要だと統計局も説明しています。
