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中学生の学習ノート教科書をもう一段くわしく

四則の混じった計算と正負の数の利用

1章のしめくくり。加減乗除と累乗が混ざった式の 計算順序、計算を楽にする 分配法則、そして「基準とのちがい」を使った 平均の計算まで。実生活で正負の数が活きる場面も見ていきます。

計算の順序:4つの優先順位

計算の順序
優先順位の高い順に
  1. カッコの中(カッコがあれば、中を最初に)
  2. 累乗(2乗・3乗など)
  3. 乗法・除法(×と÷、左から順に)
  4. 加法・減法(+と−、左から順に)
計算の順序 ① カッコの中 最優先。( ) や { } の中を先に計算 ② 累乗 2乗・3乗など、指数の計算 ③ 乗法・除法 × と ÷ を、左から順に ④ 加法・減法 + と − を、左から順に(最後)
図1:計算の順序は優先度の高い順

順序を意識した計算例

例1:6 + 2 × (−3)

乗法 2×(−3) を先に計算 → = 6 + (−6)

= 0

例2:(−4)2 − 5 × 2

累乗 (−4)2=16 と乗法 5×2=10 を先に計算 → = 16 − 10

= 6

例3:8 + (3 − 5) × 4

カッコ内 3−5=−2 を最優先 → = 8 + (−2) × 4

乗法 (−2)×4=−8 → = 8 + (−8)

= 0

同じ優先順位なら左から

乗法と除法は同じ優先順位です。たとえば 24÷(−3)×2 は、先に (−3)×2 をするのではなく、左から 24÷(−3)=−8、次に −8×2=−16 と計算します。加法と減法も同じように左から進めます。

分配法則を使う:計算を楽に

法則
分配法則

a × (b + c) = a × b + a × c

かっこの中の各項に、外の数をそれぞれかける。逆向きにも使える。

分配法則は 2方向に使えます:

  • カッコを 外す方向:3 × (5 + 2) = 3×5 + 3×2
  • カッコで くくる方向:3×7 + 3×4 = 3 × (7+4) = 3×11 = 33
分配法則を使った計算

例1:(−4) × (50 + 3) = (−4)×50 + (−4)×3 = −200 + (−12) = −212

例2:25 × (−7) + 25 × (−3) = 25 × (−7 − 3) = 25 × (−10) = −250

分配法則でカッコを外すときは、カッコ内のすべての項に外の数をかけます。片方だけにかけるミスがとても多いので注意してください。

正負の数の利用:基準を使った平均

「基準とのちがい」を正負の数で表すと、平均の計算がぐっと楽になります。

例:5人の身長の平均を求める

5人の身長:151cm、148cm、152cm、150cm、154cm

方法A(普通に計算)

合計:151+148+152+150+154 = 755

平均:755÷5 = 151cm

方法B(基準150cmを使う)

基準150cmからのちがい:+1, −2, +2, 0, +4

ちがいの合計:1+(−2)+2+0+4 = +5

ちがいの平均:+5÷5 = +1

本当の平均:基準150 + 1 = 151cm

大きい数どうしを直接足すより、基準からの小さなちがいだけ計算するほうが速くて間違いにくい ── これが正負の数の威力です。

使いどころ
  • テストの平均点(基準を平均点に近い値に置く)
  • 気温の平均(基準を月間の中ほどの値に)
  • 製品重量の平均(規格値からのズレ)

この章でつまずきやすいところ

四則混合や分配法則、基準を使った平均は、本文を読んでいる途中に「あれ、ここはどう進めるんだっけ」と手が止まりやすい単元です。式を見ている瞬間に起きる迷いを4つ取り上げ、見分け方のコツでスッと進めるようにします。

左から順に計算すればよいと思い込んでしまう

  • つまずく場面:本文で「6 + 2 × (−3)」の式を見たとき、左から 6+2=8 と先に足してしまいたくなる場面。優先順位の説明を読む前に、目に入った左側から処理してしまい、後で「あれ、答えが合わない」と止まる。
  • 克服のコツ:優先順位で見分けるのがコツ。式を見たら左から計算する前に、まずカッコ→累乗→乗除→加減の順で印をつける。同じ順位どうし(乗法と除法、加法と減法)が並んでいるときだけ、左から処理する。
  • ミニ例:「6 + 2 × (−3)」では、足し算より先に 2 × (−3) = −6 を処理する。そのあとで 6 + (−6) = 0 と進めると、式の意味どおりに計算できる。

乗除が並ぶと真ん中から計算したくなってしまう

  • つまずく場面:「24 ÷ (−3) × 2」のような式を読んでいる途中、カッコがあると目を引かれて (−3) × 2 を先に計算したくなる場面。乗法と除法は同じ優先順位だと頭ではわかっていても、見た目で順序を決めてしまいやすい。
  • 克服のコツ:位置関係で見分けるのがコツ。乗法と除法が混ざった列は、カッコの見た目ではなく左から順に処理する。迷ったら、÷を「×逆数」に直してから左から並べると、順序のブレが消える。
  • ミニ例:「24 ÷ (−3) × 2」は、まず左の 24 ÷ (−3) = −8、次に −8 × 2 = −16。先に (−3) × 2 = −6 とすると、24 ÷ (−6) = −4 になり値がずれる。

カッコ前のマイナスを最初の項だけにかけてしまう

  • つまずく場面:分配法則の本文で「(−4) × (50 + 3)」を見たとき、(−4) × 50 までは丁寧に書けても、+3 のほうは符号を変えずにそのまま足してしまう場面。カッコを外した瞬間に、外の数を全部の項に配るルールがふっと抜ける。
  • 克服のコツ:因果関係で見分けるのがコツ。カッコの外の数は、中の項すべてに同じ理由でかかる。だからカッコを外すときは、外の数を中の項の数だけ書き写してから掛ける、と決めておく。片方だけに反映したらルール違反。
  • ミニ例:「(−4) × (50 + 3)」では、(−4) × 50 + (−4) × 3 = −200 + (−12) = −212。+3 のほうも (−4) をかけるので、+3 のままにせず (−12) になる。

基準との差の平均をそのまま答えてしまう

  • つまずく場面:本文の「基準60点として平均を求める」を読み、ちがいの合計+10、ちがいの平均+2 まで出した直後の場面。ここで「平均は+2」と書きたくなるが、求めたいのは点数そのものの平均なのに、差のまま止まってしまう。
  • 克服のコツ:時系列で見分けるのがコツ。基準を使う平均は、①基準を置く→②差を正負で出す→③差の平均→④基準に足し戻すの順。手順④を忘れると、答えが「差」のままになる。最後に基準値を足したか必ず確認する。
  • ミニ例:62, 58, 65, 61, 64点を基準60で処理すると、差は +2, −2, +5, +1, +4、ちがいの平均は +2。最後に 60 + 2 = 62点 と基準に戻して、はじめて本当の平均になる。

練習問題

問題1(四則の順序)
次を計算しなさい。
  1. 5 + 4 × (−3)
  2. (−6)2 + 2 × (−7)
  3. 10 − (4 − 9) × 2
  4. −32 × 2 + 18 ÷ (−6)
  5. 24 ÷ (−3) × 2
答えを見る

(1) 4×(−3)=−12 → 5+(−12) = −7

(2) (−6)2=36、2×(−7)=−14 → 36+(−14) = +22

(3) カッコ内 4−9=−5 → 10−(−5)×2 = 10−(−10) = +20

(4) −32=−9、(−9)×2=−18、18÷(−6)=−3 → (−18)+(−3) = −21

(5) 乗除は左から。24÷(−3)=−8、−8×2=−16

問題2(分配法則)
分配法則を使って、計算を工夫しなさい。
  1. 25 × (−4) + 25 × (−6)
  2. (−12) × 35 + (−12) × 65
  3. (−8) × (100 − 3)
答えを見る

(1) 25×(−4 −6) = 25×(−10) = −250

(2) (−12)×(35+65) = (−12)×100 = −1200

(3) (−8)×100 − (−8)×3 = −800 + 24 = −776

※ 共通因数でくくると、複雑な計算が一発で終わる。

問題3(基準を使った平均)
5人の生徒のテスト点数:62点、58点、65点、61点、64点 の平均を、基準60点として正負の数を使って求めなさい。
答えを見る

基準60点とのちがい:+2、−2、+5、+1、+4

合計:2+(−2)+5+1+4 = +10

ちがいの平均:+10÷5 = +2

本当の平均:60 + 2 = 62点

まとめ ── 1章のおさらい

  • 計算の順序:カッコ → 累乗 → 乗除 → 加減。左から順に。
  • 乗法と除法、加法と減法は、それぞれ同じ優先順位。混ざっていたら 左から計算する。
  • 分配法則:a×(b+c) = a×b + a×c。共通因数でくくれば計算が楽。
  • 基準を使った平均:基準からのちがいを正負で表し、ちがいの平均を取って基準に足す。
  • 1章を通して学んだこと:負の数の世界、数直線・絶対値、四則計算、累乗、逆数 ── ぜんぶ次の章「文字と式」で文字式の計算に活用される。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

気温の「平年差」は、基準からのちがいを正負で表す本物の計算実生活

気象庁は、その年の平均気温が1991〜2020年の30年平均値(基準値)よりどれだけ高いか低いかを「偏差(平年差)」として正負の数で発表しています。基準より暖かければ正、寒ければ負で表すしくみは、教科書で学ぶ「基準150cmからのちがい」で平均を出す方法とまったく同じ考え方です。実際この方法で計算すると、日本の年平均気温は100年あたり約1.44℃の割合で上昇していることが分かります。

出典:気象庁「日本の年平均気温」

土地の高さの「0」は東京湾の海面、海より低い土地はマイナス実生活

国土地理院は、東京湾の平均海面を標高0メートルの基準と決めています。そのため海面より低い土地は標高がマイナスとなり、日本では秋田県の八郎潟干拓地のように海抜マイナス約4メートルの場所もあります。どこを基準(0)に置くかで正と負が決まるという、正負の数の出発点が現実の地図に使われています。

出典:国土地理院「標高と海抜と水準点」

ニュースの「マイナス成長」も正負の数の引き算実生活

経済成長率(GDP成長率)は、国の経済が前の年や前の期と比べてどれだけ増減したかを表す数値で、増えればプラス、減ればマイナスで示されます。たとえば「年率マイナス1.8%」は、前と比べて経済が縮んだことを意味します。これは「今の量−前の量」を基準と比べて正負で表す、加減の計算そのものです。

出典:総務省統計局「統計FAQ 我が国の経済成長率」

99×7を暗算するコツは、小学校から続く分配法則発展

99×7のような計算は、99を(100−1)とみて (100−1)×7 = 700−7 = 693 とすれば暗算でも一瞬で求められます。これは分配法則 a×(b+c)=a×b+a×c を逆向きや差の形に応用したもので、文部科学省の学習指導要領でも小学校から交換・結合・分配法則としてまとめて学ぶ内容です。中1で正負の数に広げて使うと、計算の工夫の幅がさらに大きく広がります。

出典:文部科学省「小学校学習指導要領 算数」

負の数を世界で最初に計算したのは約2000年前の古代中国発展

中国の古い数学書『九章算術』には、正の数と負の数を区別して計算する方法が記されており、正負の数の扱いとしては世界でもっとも古いと考えられています。当時の人々は算木(計算用の棒)の色などで正・負を区別し、借金や不足を負の数で表していました。教科書で当たり前に使う正負の計算は、長い歴史を経て受け継がれてきた人類の発明です。

出典:コトバンク(日本大百科全書)「九章算術」