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作図の応用 ── 3つの基本作図を組み合わせて使う

5章のしめくくり。これまでに学んだ 3つの基本作図(垂直二等分線・角の二等分線・垂線)を組み合わせると、外接円の中心・内接円の中心・接線など、さまざまな応用作図ができます。テストで頻出のパターンを整理します。

応用1:3点を通る円の中心(外接円の中心)

3点 A、B、C を通る円が1つだけ存在します。その中心は、3点から等距離の点。

作図手順
  1. 線分 AB の 垂直二等分線を引く(A と B から等距離の点の集まり)
  2. 線分 BC の 垂直二等分線を引く(B と C から等距離の点の集まり)
  3. 2本の交点が 3点から等距離の点 = 外接円の中心

この点を中心にして、半径を A までの距離にすれば、A、B、C すべてを通る円が描けます。

外接円の中心を作図する(応用1) A B C O ① ABの垂直二等分線 ② BCの垂直二等分線 作図の手順 ① 線分ABの垂直二等分線 ② 線分BCの垂直二等分線 ③ 2本の交点が中心O ④ 半径OAで円をかく ⑤ A・B・Cを通る外接円 「3頂点から等距離」の点O
図:3点A・B・Cを通る外接円の中心は、2辺(AB・BC)の垂直二等分線の交点として作図できます。

応用2:三角形の内側に収まる最大の円(内接円の中心)

三角形の3辺すべてに接する円(内接円)の中心は、3辺から等距離の点。

作図手順
  1. 角 A の 二等分線を引く(角 A の2辺から等距離の点)
  2. 角 B の 二等分線を引く(角 B の2辺から等距離の点)
  3. 2本の交点が 3辺から等距離の点 = 内接円の中心

応用3:円外の点から円への接線

「円外の点 P から円に接する直線(接線)を引く」── これも基本作図の組み合わせで描けます。

作図手順
  1. P と円の中心 O を結ぶ線分 PO の 垂直二等分線を引き、線分の中点 M を見つける
  2. M を中心に、半径 MP(=MO)の円を描く
  3. その円と元の円の 交点を T、T' とする
  4. P と T、P と T' を結ぶ直線が 2本の接線

少し難しいですが、円周角の性質(中3で学ぶ)を使えば「PT は OT に垂直」と説明できます。

応用4:2点から距離が決まった点を作図

「点 A から 5cm、点 B から 3cm の位置にある点 P」── 中学では具体的な距離は問いませんが、考え方は:

  • A を中心に半径 5cm の円を描く(A から 5cm の点の集まり)
  • B を中心に半径 3cm の円を描く(B から 3cm の点の集まり)
  • 2つの円の交点が答え(条件を満たす点が2つある場合あり)

応用5:地図問題

例題:地図上で、A 駅と B 駅から等距離で、かつ国道(直線 l)上にある場所

「A と B から等距離」 → AB の 垂直二等分線上の点

「国道上」 → 直線 l 上の点

求める場所は、垂直二等分線と直線 l の交点。

作図問題を解くコツ

3つの基本パターンを意識する
  1. 「2点から等距離」のキーワード → 垂直二等分線
  2. 「2辺から等距離」または「角を等しく分ける」 → 角の二等分線
  3. 「垂直」「最短距離」 → 垂線

問題文から「等距離」「直角」のような言葉を見つけたら、対応する基本作図を組み合わせる。

つまずきポイント
  • 条件を1つずつ満たす:複数条件があるときは、それぞれの条件を満たす図形(直線・円)を描き、その 交点を見つける。
  • 解が複数ある場合:「条件を満たす点」は1つとは限らない。2つの円の交点は通常2つ、円と直線の交点は最大2つ。
  • 作図の線は消さない:採点者にどう作図したかを示すため、補助線・円弧はすべて残す。

条件を図形に翻訳する

  • 作図の応用は、問題文の条件を「点の集まり」に直すと整理しやすい。
  • 2点A,Bから等距離の点の集まりは、線分ABの垂直二等分線。
  • 角の2辺から等距離の点の集まりは、角の二等分線。
  • 直線までの距離が最短になる線は垂線。円の接線は接点を通る半径と垂直。
交点が答えになる理由

「AからもBからも等距離」かつ「直線l上」という条件なら、垂直二等分線と直線lをそれぞれ作図する。

2つの条件を同時に満たす点は、2つの図形の交点として現れる。

この章でつまずきやすいところ

作図の応用は、問題文の言葉を読みながら『どの基本作図を使えばよいか』を決める場面で迷いやすい単元です。本文や問題を見ている途中で生まれる典型的な迷いを取り上げ、見分け方を整理します。

外接円と内接円で使う作図を取り違える

  • つまずく場面:本文で『外接円の中心は2辺の垂直二等分線の交点』『内接円の中心は2角の二等分線の交点』と続けて読むと、どちらがどちらだったか頭の中で混ざり、問題で『内接円を作図せよ』と出た瞬間に手が止まってしまう。
  • 克服のコツ:等距離の対象で見分ける。外接円は『3つの頂点から等距離』なので、点と点の真ん中=垂直二等分線を使う。内接円は『3つの辺から等距離』なので、辺と辺の間を等しく分ける=角の二等分線を使う。『点なら垂直二等分線・辺なら角の二等分線』と覚える。
  • ミニ例:三角形ABCで『3頂点を通る円』と書かれていたら頂点=点なのでAB・BC・CAのうち2辺の垂直二等分線(どの2辺でもよい)を引く。『3辺に接する円』と書かれていたら辺なので∠A・∠B・∠Cのうち2つの角の二等分線(どの2つでもよい)を引く。2本引けば交点が決まり、3本目は必ず同じ点を通るので2本でよい。

『等距離』とだけ見て条件の対象を読み飛ばす

  • つまずく場面:問題文に『等距離』という言葉が出てきた瞬間に垂直二等分線だと決めつけてしまい、よく読むと『2辺から等距離』と書いてあって、角の二等分線が正解だった、というすれ違いが起きやすい。
  • 克服のコツ:『等距離』を見つけたら、すぐ作図を決めずに何から等距離かを確認する。2点から等距離なら垂直二等分線、角をなす2辺(2直線)から等距離なら角の二等分線、直線まで最短なら垂線。『等距離』の直前の名詞(点か辺か)を○で囲む手順を作ると迷わない。
  • ミニ例:『A駅とB駅から等距離』は2点から等距離なので線分ABの垂直二等分線。『道路lと川mから等距離』は2辺から等距離なのでl と m が作る角の二等分線になる。

複数条件を1本の作図で満たそうとしてしまう

  • つまずく場面:『A,Bから等距離で、かつ直線l上にある点』のように条件が2つある問題を読んでいるとき、1本の線で両方を満たそうとして手が止まる。または垂直二等分線だけ引いて満足してしまい、直線lとの関係を忘れる。
  • 克服のコツ:複数条件は条件ごとに別々の図形を作図し、その交点を答えにすると整理できる。手順は『①条件1を満たす点の集まり(直線や円)を描く → ②条件2を満たす点の集まりを描く → ③交点を答える』の順。1本ずつ別作図と覚える。
  • ミニ例:『A,Bから等距離で直線l上』なら、まず線分ABの垂直二等分線を引き、次にすでにある直線lを確認して、2本の交点(1つの点)がバス停を作る場所になる。

答えの点は1つだけだと思い込む

  • つまずく場面:『Aから5cm、Bから3cmの位置にある点』を考える途中で、円を2つ描いてみたら交点が2つ現れ、『どっちが正解?』と迷ったり、片方を消してしまったりする。1点に絞らないと気が済まなくて手が止まる。
  • 克服のコツ:作図の答えは1点とは限らないと先に決めておく。2つの円の交点は通常2つ、円と直線の交点は最大2つになるのが普通。問題で『すべて求めよ』『1つでよい』などの指示を確認し、条件を満たす点はすべて答えとして残す。交点の個数で場合分けする見方。
  • ミニ例:Aを中心に半径5cmの円とBを中心に半径3cmの円が交わると、交点はふつう2つ現れる。どちらも『Aから5cm、Bから3cm』を満たすので両方とも答えになる。

練習問題

問題1(識別)
次の作図に必要な「基本作図」(垂直二等分線・角の二等分線・垂線)はどれか答えなさい。
  1. 線分 AB の中点を求める
  2. 角 ∠ABC を半分に分ける
  3. 点 P から直線 l に最短距離で下ろす線
  4. 3点 A、B、C を通る円の中心を求める
答えを見る

(1) 垂直二等分線(中点を通るので)

(2) 角の二等分線

(3) 垂線(最短距離は垂線)

(4) 垂直二等分線を2本(AB と BC の垂直二等分線の交点が円の中心)

問題2(外接円)
3点 A、B、C を通る円の中心はどのような点か。「等距離」の言葉を使って説明しなさい。
答えを見る

解答例:3点 A、B、C を通る円の中心は、A、B、C のすべてから等距離にある点である。線分 AB の垂直二等分線上の点はAとBから等距離、線分 BC の垂直二等分線上の点はBとCから等距離なので、その2本の交点が3点から等距離となり、円の中心となる。

問題3(応用)
2地点 A と B から等距離で、川沿いの道路(直線 l)上にあるバス停を作りたい。どこに作ればよいか、考え方を説明しなさい。
答えを見る

解答例:「A と B から等距離」を満たす場所は、線分 AB の 垂直二等分線上のすべての点。「川沿いの道路上」を満たす場所は、直線 l 上のすべての点。両方を満たすには、AB の垂直二等分線と直線 l の交点がバス停を作る場所になる。

まとめ ── 5章のおさらい

  • 3つの基本作図を組み合わせると、外接円・内接円・接線など多くの応用作図ができる。
  • キーワードと作図の対応:「2点から等距離」→垂直二等分線、「2辺から等距離/角を分ける」→角の二等分線、「垂直/最短」→垂線。
  • 複数条件の問題は 各条件を満たす図形の交点を求める。
  • 5章の流れ:図形用語 → 図形の移動 → 円とおうぎ形 → 垂直二等分線 → 角の二等分線・垂線 → 応用。
  • 次章「6章 空間図形」では、3次元の図形を扱う。

もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)

※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。

地図づくりを支える「三角測量」と作図実生活

昔の正確な地図は、まず2点間の距離をきちんと測り、もう1点を加えて三角形をつくり、その内角を測ることで残りの点の位置を計算する「三角測量」でつくられました。三角形を次々につないで広い土地の各点の位置を求めていく考え方で、作図で習う「点の位置を条件から決める」発想とつながっています。

出典:国土地理院「三角点の測量方法」

全国に約10万点ある「三角点」実生活

三角点は、日本の位置(緯度・経度)の基準を表す国家基準点で、全国に約10万点あります。各種地図の作成や道路・河川・都市計画など社会の基盤づくりに欠かせず、作図で学ぶ「位置を正確に決める」考え方が現実の測量を支えています。

出典:国土地理院「三角点」

勢力範囲を分ける「ボロノイ図」の境界は垂直二等分線発展

平面にいくつかの点(母点)があるとき、「どの点に一番近いか」で平面を区分けした図をボロノイ図といいます。隣り合う2つの母点の領域の境界線は、2点を結ぶ線分の垂直二等分線の一部になります。これは「2点から等距離の点は垂直二等分線上にある」という作図の性質そのものです。

出典:ウィキペディア「ボロノイ図」

「一番近いお店・基地局」を探すボロノイ図の応用実生活

ボロノイ図を使うと、ある場所から「最も近い母点(最近点)」をすばやく探すことができます。たとえば最寄りの店や携帯電話の基地局の担当エリアを決めるのに役立ち、その区分けの線はやはり垂直二等分線です。日常の「一番近い場所はどこか」という問いに、作図の考え方が使われています。

出典:ウィキペディア「ボロノイ図」

三角形の網で広い土地をはかる発展

三角測量では、1つの三角形だけでなく点を増やして三角形をつなげ、三角形の網をつくって各点の位置を求めます。外接円を作図するときに2辺の垂直二等分線の交点を使うように、現実の測量でも基準となる点を一つずつ確定させて広い範囲へ広げていきます。

出典:国土地理院「三角点の測量方法」