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関東から九州北部まで、海ぞいに工業地帯・工業地域が帯のように連なっているのが太平洋ベルトです。輸出入に便利な港が多く、人口が多いため労働力と消費地の両方に近いことが理由です。三大工業地帯の位置関係と、帯の中に含まれる工業地域の名前をまずこの図で確認しましょう。
農業 ── 気候の違いを売る時期の工夫に変える
- 日本の農業は耕地がせまい分、単位面積あたりの収穫量を高める集約的な農業が特色。
- 稲作:東北・北陸は水と平地に恵まれ「日本の穀倉地帯」と呼ばれる。
- 近郊農業:大都市の近くで、新鮮さが求められる野菜などを育てて短時間で出荷する農業。
促成栽培:温暖な気候とビニールハウスを利用し、他の産地より早い時期に育てて出荷する栽培方法。ライバルが少ない時期に高く売れる。宮崎平野・高知平野のきゅうり・ピーマン・なすなど。
抑制栽培:夏でも涼しい高原の気候を利用し、他の産地の出荷が終わったあとの遅い時期にずらして出荷する栽培方法。長野県の野辺山原、群馬県の嬬恋村などのレタス・キャベツ(高原野菜)。
- どちらも「他の産地とずらして高く売る」工夫。ちがいは早める(促成)か遅らせる(抑制)か。
- 促成栽培=暖かい地方でビニールハウス。抑制栽培=涼しい高原で夏でも低温を利用。
食料自給率はカロリーベースで約4割と低く、多くを輸入に頼っています(正確な数値・品目別の詳しい数字は中1地理「日本の人口・産業の特色」で確認)。自給率の低さを補う考え方として、地元でとれた農産物を地元で消費する地産地消が注目されている。輸送距離が短いほどフードマイレージ(食料の輸送距離×重さで表す、輸送にかかる環境負荷の目安)が小さくなり、地産地消は環境負荷の軽減にもつながると考えられている。
漁業 ── 「とる漁業」から「育てる漁業」へ
漁業は漁場の違いで遠洋漁業(外国の沿岸まで出て数か月〜1年がかりでとる)・沖合漁業(数日かけて自国の沖合でとる)・沿岸漁業(日帰りで岸近くでとる)・海面養殖業(いけすなどで育てる)の4つに分けられる。
現在は沖合漁業の漁獲量が最大。
1970年代、各国が排他的経済水域(200海里)を設定し自由に漁ができる海が狭まったことに加え、石油危機による燃料費の高騰も重なり、遠洋漁業は1970年代から急速に減少した。
かわって、「とる漁業から育てる漁業へ」の転換が進む。
養殖業:卵や稚魚から出荷する大きさまで、いけすなどでずっと人の手で育てる漁業。広島のかき、愛媛のたい、鹿児島のぶりなど。
栽培漁業:卵から稚魚になるまでの弱い時期だけ人が育て、そのあとは自然の海に放流して育ったものをとる漁業。北海道のほたて・さけなど。
- 養殖業:出荷までずっと人が管理。
- 栽培漁業:途中から自然の海に放流する。
- どちらも「とる漁業」ではなく「つくり育てる漁業」にまとめられる。
工業 ── 太平洋ベルトと三大工業地帯
- 太平洋ベルト:関東〜九州北部の太平洋沿岸に工業地帯・工業地域が集中する帯状の地域。
- 中京工業地帯(愛知・三重):自動車を中心に、製造品出荷額は三大工業地帯で最大。
- 阪神工業地帯(大阪・兵庫):金属・化学工業や中小工場が多い。
- 京浜工業地帯(東京・神奈川):印刷業・機械工業が特色。近年は出荷額の全国に占める割合が低下傾向。
- そのほかの工業地域:瀬戸内工業地域(化学・石油化学)、東海工業地域(オートバイ・楽器など)、北関東工業地域(高速道路の発達で内陸に工場が進出)。
高速道路が発達し、インターチェンジ付近なら港がなくてもトラックで原料・製品を運びやすくなった。
北関東工業地域など、内陸型の工業団地が広がる背景。
加工貿易から現地生産へ
1980年代以降、貿易摩擦や人件費の安さを背景に、日本企業が海外に工場を移す(現地生産)動きが進んだ。
国内の生産・雇用が減ることを産業の空洞化という。
加工貿易は日本の工業発展を支えた重要なしくみだが、現在は姿を変えつつある点に注意する。
商業・サービス業
- 就業者の約7割が第三次産業(商業・金融・運輸・観光・情報通信・医療・教育など)。くわしい割合の変化は中1地理「日本の人口・産業の特色」参照。
- ICT産業(情報通信技術)が拡大。
- 観光業:訪日外国人旅行者の増加で、宿泊・交通・土産物などの需要が拡大。
貿易 ── 輸出入品と貿易相手国
- 輸出:機械類・自動車が中心。
- 輸入:原油・LNG・鉄鉱石などの原燃料が中心。国際分業が進み、海外で作られた機械類の輸入も増加。
- 貿易額(輸出+輸入)でみた最大の貿易相手は中国、次いでアメリカ。正確な金額は「もっと知る」参照。
半導体等製造装置・医薬品・科学光学機器など、小型・軽量で高価な品目は航空機で輸送。
成田国際空港は、輸出額・輸入額とも全国の港(空港・海港)の中で1位。
海運では、中京工業地帯の玄関口となる名古屋港など各地の港が輸出入を支える。
交通網・通信網
- 新幹線:1964年の東海道新幹線開業以降、全国に拡大。人・物・情報の移動を速くした。
- 高速道路網:内陸への工場進出を支える。
- 航空網:小型・軽量で高価な貨物輸送に強み。
- 通信網:光ファイバーなどの情報通信網の整備で、ICT産業の拡大を支える。
- 促成栽培=出荷を早める(暖かい地方+ビニールハウス)。
- 抑制栽培=出荷を遅らせる(涼しい高原)。
- どちらも目的は「他の産地とずらして高く売る」こと。
- 養殖業=最後まで人が育てる。
- 栽培漁業=途中から自然の海に放流する。
- 両方をまとめて「つくり育てる漁業」と呼ぶ。
- 加工貿易は戦後の日本の工業発展を支えたしくみ。
- 今は現地生産が広がり、産業の空洞化という課題も生まれている。
- 「加工貿易=現在の日本の貿易の姿」と決めつけない。
この章でつまずきやすいところ
産業と貿易の単元は、似た用語のペア(促成/抑制、養殖/栽培、加工貿易/現地生産)が次々出てくるため、本文を読み進める途中で混同しやすい場所です。よくある迷いを整理します。
促成栽培と近郊農業を同じ「早く出荷する農業」と読んでしまう
- つまずく場面:近郊農業と促成栽培が続けて出てくると、両方とも「早く新鮮に出荷する農業」という共通点に引かれて、区別があいまいになる場面。
- 克服のコツ:工夫の中身で見分ける。近郊農業は大都市に近い距離を生かして新鮮さを保つ工夫。促成栽培は気候と施設を生かして出荷の時期そのものを早める工夫。「距離の工夫」か「時期の工夫」かで読み分ける。
- ミニ例:本文に「千葉県で新鮮な野菜を東京へ」と出てきたら近郊農業、「宮崎平野でビニールハウスのきゅうり」と出てきたら促成栽培、と場面ごとに言い換えて確認する。
三大工業地帯と工業地域を同じ大きさの言葉として読んでしまう
- つまずく場面:「中京工業地帯」のあとに「瀬戸内工業地域」が出てくると、「地帯」と「地域」の呼び方の違いに気づかず、同じ規模の言葉として読み流してしまう場面。
- 克服のコツ:歴史的な規模の違いで整理する。京浜・中京・阪神の三つだけが特に古くから発達した規模の大きい「工業地帯」で、それ以外の瀬戸内・東海・北関東などは「工業地域」と呼び分けられている、と言葉の重みの違いとして読む。
- ミニ例:本文で「三大工業地帯」という数字(3つ)が出てきたら、京浜・中京・阪神の3つだけを指し、それ以外はすべて工業地域だと確認する。
「輸入品目に機械類が増えた」を「加工貿易が今も同じ」と読んでしまう
- つまずく場面:「輸入に機械類も増えている」という一文を読んだとき、輸出も輸入も機械類なら加工貿易の姿がそのまま続いていると思い込み、現地生産・産業の空洞化の話につながりにくくなる場面。
- 克服のコツ:因果関係で整理する。輸入の機械類が増えたのは、日本企業が海外の自社工場で作った製品を国内に運び込むケースが増えたから。「原料を輸入して製品を輸出する」加工貿易とは逆方向の動きが混ざっている、と読み替える。
- ミニ例:本文の「現地生産」「産業の空洞化」が出てきたら、輸入品目に機械類が増えた背景とセットで思い出せるかを確認する。
成田国際空港を「輸出のための空港」とだけ読んでしまう
- つまずく場面:「成田国際空港が貿易額日本一」という一文を、輸出だけの実績と思い込み、輸入額でも同じく上位である点を読み落とす場面。
- 克服のコツ:輸出・輸入の両方で確認する。成田国際空港は輸出額・輸入額のどちらも全国の港(空港・海港)の中で上位にある。「貿易額」は輸出と輸入を合わせた言葉だと読み直す。
- ミニ例:「小型・軽量で高価な品目」という説明を見たら、半導体等製造装置(輸出)や医薬品(輸入)のように、輸出品・輸入品の両方に当てはまる例を思い出す。
練習問題
- 宮崎平野・高知平野で行われる栽培方法
- 長野県の高原などで行われる栽培方法
- 200海里の排他的経済水域の設定で縮小した漁業
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(1) 促成栽培 (2) 抑制栽培 (3) 遠洋漁業
次の工業地帯と、その特色の組み合わせを答えよ。
- 中京工業地帯
- 京浜工業地帯
- 阪神工業地帯
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(1) 自動車中心・出荷額日本一 (2) 印刷業・機械工業 (3) 金属・化学工業、中小工場が多い
輸出入額(貿易額)で全国の港(空港・海港)の中で1位となっている空港はどこか。
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成田国際空港
「加工貿易」から「現地生産」へと日本企業の動きが変化してきた理由と、その結果として国内に生じる課題を説明しなさい。
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例:貿易摩擦や海外の人件費の安さを背景に、日本企業が海外に工場を移して現地で生産するようになったため。その結果、国内の生産や雇用が減る「産業の空洞化」が課題となっている。
まとめ
- 農業:促成栽培(早める)・抑制栽培(遅らせる)で他産地とずらして出荷。
- 漁業:「とる漁業」から「育てる漁業」(養殖業・栽培漁業)へ転換。
- 工業:太平洋ベルトに集中。三大工業地帯は京浜・中京(出荷額最大)・阪神。
- 貿易:加工貿易から現地生産へ。産業の空洞化が課題。最大の貿易相手は中国、次いでアメリカ。
- 成田国際空港は貿易額日本一。新幹線・高速道路・光ファイバーなどの交通・通信網が産業を支える。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
最新の食料自給率はカロリーベースで38%時事
農林水産省が公表した令和6年度の食料自給率は、カロリーベースで38%と前年度並みでした。生産額ベースでは64%となり、計算方法によって自給率の見え方が変わります。産業別に見ると、農業の小さな割合の裏に、日本人の食生活を支える大きな役割があります。
栽培漁業と養殖業のちがいは農林水産省のキッズページでも解説発展
農林水産省の子ども向け相談ページでは、「栽培漁業は、卵から稚魚になるまでのいちばん弱い時期を人の手で守り、そのあとは自然の海に放流して育ったものをとる漁業。養殖業は、稚魚をいけすなどで飼育し、食べられる大きさまで育てること」と説明されています。似た言葉ですが、育て方の範囲がちがう点がポイントです。
成田国際空港は輸出・輸入とも全国の港の中で1位時事
東京税関の発表によると、令和7年(2025年)分の成田国際空港の貿易額は、輸出額が20兆974億円(全国の空港・海港の合計に対して18.2%)、輸入額が21兆1,840億円(同18.7%)で、輸出・輸入ともに全国の港の中で1位でした。半導体等製造装置や医薬品など、小型・軽量で高価な品目が多いことが特徴です。
令和7年分の貿易総額は輸出110兆円・輸入113兆円時事
財務省の貿易統計(速報)によると、令和7年(2025年)分の日本の輸出額は110兆4,480億円、輸入額は113兆987億円でした。地域別では、輸出額はアメリカ(20兆4,140億円)が最大、輸入額は中国(26兆6,942億円)が最大です。輸出と輸入を合わせた貿易総額でみると、中国(約45兆円)が日本にとって最大の貿易相手であり、アメリカ(約33兆円)が続きます。
宮崎県はきゅうり・ピーマンの促成栽培で全国トップクラス発展
宮崎県は温暖な気候を生かした冬春期のピーマン(愛称「グリーンザウルス」)やきゅうりの促成栽培が盛んな地域として知られ、県の農業試験場でも大規模施設園芸に対応した栽培技術の研究が行われています。ビニールハウスと気候の組み合わせが、出荷時期をずらす工夫を支えています。
「産業の空洞化」は本当に起きているのか、慎重な検証も発展
内閣府の経済分析では、海外への現地生産の広がりが国内の「産業空洞化」につながっているという見方について、実際のデータをもとに慎重に検証する必要があると指摘しています。現地生産の増加=空洞化と単純に結びつけず、国内でどのような産業が新しく生まれているかも合わせて見る視点が大切です。
