発電は「エネルギー変換」の応用
2章で学んだ力学的エネルギー保存では、位置エネルギーと運動エネルギーが互いに変換されることを確認しました。発電のしくみも同じ考え方の応用です。もとになるエネルギーを、いくつかの段階を経て電気エネルギーに変えるのが発電で、方式によって変換の道すじが違います。
火力発電 ── 化学エネルギーから電気へ
化石燃料は有限な資源で、価格が国際情勢に左右されやすい
燃焼時にCO2(二酸化炭素)を排出し、地球温暖化の主な原因とされる
現在の日本の発電量の中心を占める方式
水力発電 ── 位置エネルギーから電気へ(復習)
水力発電は位置エネルギー→運動エネルギー→電気エネルギーという、2章で学んだ変換をそのまま利用する発電方式です。高い所にためた水を落とし、その勢いで水車を回します。国産のクリーンなエネルギーですが、ダムの建設には大規模な環境の改変が必要になります。
原子力発電 ── 核エネルギーから電気へ
中2で学んだとおり、放射線にはα線・β線・γ線・X線などの種類があり、物を通り抜ける力(透過力)や物質を変化させる力を持つ(くわしくは中2「電子と放射線」で復習できる)
放射線を大量に受けると人体に影響する(被曝)ため、原子炉は厳重に管理されている
使い終えた燃料は放射性廃棄物となり、長期間の安全な処理・処分が必要
再生可能エネルギー ── 自然の力を電気に
- 太陽光発電:光→電気。設置しやすいが天候・昼夜で発電量が変わる。
- 風力発電:風の運動エネルギー→電気。風が弱いと発電できない。
- 地熱発電:地下のマグマの熱→蒸気→電気。火山が多い日本に向いている。
- バイオマス発電:植物などを燃やして発電。育てた分だけ燃やせば、大気中のCO2は増えないと考えられている(カーボンニュートラル)。
- カーボンニュートラルは、CO2の排出量と吸収量(または植物が育つときに取り込む量)を差し引きゼロに近づけるという考え方。
- 「まったくCO2を出さない」という意味ではない。
- バイオマス発電は燃やす時にCO2を出すが、燃料となる植物が育つ間に同じ量のCO2を吸収していると考える。
発電方式のまとめ
火力化学(化石燃料)→熱→運動→電気/課題:資源有限・CO2排出
水力位置→運動→電気/課題:ダム開発の環境改変
原子力核→熱→運動→電気/課題:放射線管理・廃棄物処理
太陽光光→電気/課題:天候・昼夜で発電量が変化
科学技術と人間 ── プラスチックと新素材
- プラスチックは便利だからこそ大量に生産・消費されてきた。
- 自然分解されにくく、細かく砕けたマイクロプラスチックが海に流れ込み、生態系への影響が心配されている。
- 科学技術は「便利だから良い」で終わらせず、利便性と課題の両方を見て評価する姿勢が大切。
プラスチック以外にも、軽くて強い炭素繊維や、特定の機能を持つ機能性高分子など、新しい素材(新素材)の開発が進んでいる。これらはロボットやAI技術とともに、これからの社会を支える科学技術として期待されている。
持続可能な社会をつくる
限りある資源を大切にし、将来の世代も困らないようにする社会を持続可能な社会という。
- 循環型社会:ごみを減らし、資源をくり返し使う社会。
- 3R:Reduce(減らす)・Reuse(再使用する)・Recycle(再生利用する)。
- これらは国際的な目標であるSDGs(持続可能な開発目標)にもつながっている。
この単元でつまずきやすいところ
エネルギー資源と科学技術の単元は、発電方式ごとの変換の道すじと、それぞれの長所・短所を混同しやすい単元です。読み進める途中で立ち止まりやすい場面を整理しておくと、記述問題でも書き分けられるようになります。
火力発電と原子力発電の変換の道すじを同じだと思い込んでしまう
- つまずく場面:本文で「どちらも熱で水を沸かして蒸気でタービンを回す」と読んだ直後に、「もとのエネルギーも同じでは」と感じて、火力と原子力の違いがあいまいになる場面。
- 克服のコツ:見分け方は「熱を生み出す最初の一歩」だけが違うと整理する。火力は化石燃料を燃やして(化学変化)熱を作り、原子力はウランの原子核が分裂して(核反応)熱を作る。そこから先の「熱→運動→電気」は同じしくみだと分けて読む。
- ミニ例:火力は化学エネルギー、原子力は核エネルギーが出発点。その後の変換の道すじは同じ、と教科書では整理する。
再生可能エネルギーには課題がないと思い込んでしまう
- つまずく場面:「太陽光発電はCO2を出さないクリーンな発電方法」と読んだ直後に、「だから再生可能エネルギーには欠点がない」と考えてしまう場面。
- 克服のコツ:因果関係で整理する。再生可能エネルギーは資源が枯渇しない・CO2排出が少ないという長所があるが、天候や自然条件に左右され安定して供給しにくい・発電コストが高い場合があるという短所も持つ。「クリーン=欠点なし」ではないと読み分ける。
- ミニ例:太陽光発電は晴れの日の昼間はよく発電するが、雨の日や夜は発電できない、と教科書では整理する。
放射線と放射能・放射性物質を同じ言葉だと思い込んでしまう
- つまずく場面:本文で「放射線」「放射性物質」という似た言葉が続けて出てきて、どちらがどちらを指しているのか分からなくなる場面。
- 克服のコツ:位置関係で整理する。放射性物質は放射線を出す「物」そのもの(ウランなど)、放射線はそこから出てくる「もの」(α線・β線・γ線など)。原子力発電では、放射性物質をしっかり閉じ込め、放射線が外に漏れないように管理する、と役割で読み分ける。
- ミニ例:ウラン(放射性物質)が核分裂するときに放射線が出る、と教科書では整理する。
科学技術の課題を知ると「使わないほうがよい」と結論づけてしまう
- つまずく場面:マイクロプラスチックや放射性廃棄物などの課題を読んだ直後に、「だからプラスチックや原子力は全部やめるべき」と単純化してしまう場面。
- 克服のコツ:見分け方で整理する。教科書が伝えたいのは「やめるべき」という結論ではなく、利便性と課題の両方を知ったうえで、どう付き合うか考えるという姿勢。長所と短所を書き出して比べる練習をすると、記述問題でも一方だけに偏らない答えが書ける。
- ミニ例:プラスチックは便利だが海洋ごみになりやすい。だから「使わない」ではなく「減らす・リサイクルする」工夫が大切、と教科書では整理する。
練習問題
火力発電のエネルギー変換の道すじを、「→」を使って書きなさい。
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化学エネルギー(化石燃料)→熱エネルギー→運動エネルギー→電気エネルギー
水力発電と太陽光発電では、電気になるまでの変換の段階数にどんな違いがあるか。
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水力発電は位置→運動→電気の2段階の変換、太陽光発電は光→電気と直接変換される点が違う。
原子力発電の長所と課題を、それぞれ1つずつ書きなさい。
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長所:少量の燃料で大量に発電できる。課題:放射線の管理や放射性廃棄物の処理・処分が必要になる。
「プラスチックは便利だから、これからも今のまま使い続ければよい」という考え方の問題点を説明しなさい。
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プラスチックは軽く成形しやすいなど利便性が高いが、自然分解されにくくマイクロプラスチックとして海洋の生態系に影響を与える課題がある。利便性だけでなく課題も含めて評価し、3Rなどで使い方を工夫する必要がある。
まとめ
- 発電は「もとのエネルギー→電気エネルギー」への変換。方式ごとに道すじが違う。
- 火力:化学→熱→運動→電気。資源有限・CO2排出が課題。
- 水力:位置→運動→電気。国産だが環境改変が必要。
- 原子力:核→熱→運動→電気。少量燃料で大量発電だが放射線管理・廃棄物処理が課題。
- 再生可能エネルギー(太陽光・風力・地熱・バイオマス):資源が枯渇しないが天候等に左右される。
- プラスチックなどの新素材は利便性と課題の両面で評価する。
- 持続可能な社会:循環型社会・3R・SDGsへの取り組みが求められる。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
日本のエネルギー自給率は約15%実生活
資源エネルギー庁によると、2023年度の日本のエネルギー自給率は約15%です。多くのエネルギーを海外からの輸入に頼るこの構造の中で電気を安定して届けるため、水力・火力・原子力などの発電方式の特性を活かして組み合わせる「電源のベストミックス」という考え方が大切にされています。
カーボンニュートラルは電力業界の共通目標発展
電気事業連合会は、CO2排出量の実質ゼロをめざす「カーボンニュートラル」の実現に向け、発電時の対策(供給側の取り組み)と、電気の使い方の工夫(需要側の取り組み)の両方から取り組みを進めていることを紹介しています。
海に流れ込むプラスチックごみとマイクロプラスチック実生活
環境省は、プラスチックを含む海洋ごみ(漂流・漂着・海底ごみ)対策として、マイクロプラスチックに関する調査や国際協力などを進めています。プラスチックの便利さの裏にある海洋環境への影響は、世界的な課題として取り組みが続けられています。
循環型社会・3Rの取り組み発展
環境省は、ごみを減らし資源をくり返し使う「循環型社会」の形成に向けて、循環型社会形成推進基本法や基本計画にもとづく施策を進めています。3R(Reduce・Reuse・Recycle)は、この循環型社会をつくるための基本的な考え方です。
