図でつかむ
1ドルに対して支払う円が100円から150円に増えると、円の価値は下がっています。これが円安です。同じ300万円の自動車でも、円安になるとドルでの価格は3万ドルから2万ドルに下がり、アメリカで売れやすくなります。反対に輸入する小麦は、円安になるほど国内での値段が上がります。数字の大小と円高・円安の対応をこの図で確認しましょう。
貿易と国際分業
- それぞれの国が得意なものを作り、貿易で交換し合うことを国際分業という。
- すべてを自国で作るより、得意な分野に集中したほうが、世界全体で効率よくものを作れる。
為替相場(為替レート)とは
円高・円安の見分け方 ── 最重要ポイント
円高:円の価値が上がること(例:1ドル150円 → 100円)
円安:円の価値が下がること(例:1ドル100円 → 150円)
- 1ドル=150円 から 1ドル=100円 へ変わると、数字は小さくなるのに円高。
- 理由:同じ1ドルを、より少ない円で買えるようになった=円の価値が上がったから。
- 逆に、1ドル=100円 から 1ドル=150円 へ変わるのは円安(数字が大きくなるほど円安)。
- 「数字が大きい=価値が高い」という日常の感覚とズレるので、必ず1ドルを買うのに必要な円の量で考える。
円高・円安の影響を具体的な数字で
1ドル=100円(円高):300万円 ÷ 100円 = 3万ドル(現地価格が高くなり売れにくい)
1ドル=150円(円安):300万円 ÷ 150円 = 2万ドル(現地価格が安くなり売れやすい)
→ 円安は輸出に有利、円高は輸出に不利。
輸入品(原油・小麦など):円安になるほど国内での価格が上がる(輸入に不利)。円高では下がる(輸入に有利)。
海外旅行:円高だと同じ円でより多くの外国のお金に両替できるためお得。円安では割高になる。
円高が進むと、輸出企業は現地価格が高くなり不利になるため、生産拠点を海外に移す動きが強まることがある。
国内の工場が減り、生産・雇用が縮小することを産業の空洞化という(くわしい産業側の背景は中2地理「日本の産業と貿易・交通」も参照)。
多国籍企業と貿易摩擦
- 多国籍企業:複数の国に工場や支社を持ち、世界規模で活動する企業。経済のグローバル化を進める存在。
- 貿易摩擦:ある国からの輸出が増えすぎて、相手国の産業を圧迫し対立が生じること。
WTO(世界貿易機関):貿易のルールを話し合う国際機関。
FTA(自由貿易協定):特定の国・地域間で関税などの貿易の障壁を減らす協定。
EPA(経済連携協定):FTAの内容に加え、投資・人の移動・知的財産保護などまで含む、より幅広い協定。
TPP:環太平洋地域の国々によるEPAの一つ。
- FTA=貿易の自由化(関税削減など)が中心。
- EPA=FTAの内容に投資・人の移動・協力なども加えた、より広い協定。
- 日本が結ぶ協定は、ほぼすべてEPAの形をとっている。
南北問題・南南問題
- 南北問題:主に北半球に多い先進国と、南半球に多い発展途上国との間の経済格差の問題。
- 南南問題:発展途上国どうしの間でも、資源の有無などにより広がる格差の問題。
フェアトレード:発展途上国でつくられた作物や製品を、適切な価格で継続的に取引するしくみ。生産者の生活改善と自立を支える。
ODA(政府開発援助):先進国の政府が発展途上国の開発のために行う援助。
マイクロクレジット:貧しい人々が事業を始めるための、少額のお金を貸す金融サービス。
- 数字の大小と円の価値の関係が逆になることがある。
- 必ず「1ドルを買うのに何円必要か」で考える。円が少なくて済む=円高。
- 円安:輸出企業に有利、輸入企業・海外旅行者に不利。
- 円高:輸入企業・海外旅行者に有利、輸出企業に不利。
- 「誰にとって」を必ず確認する。
- FTAは貿易の自由化(関税など)が中心。
- EPAはFTAの内容に投資・人の移動なども加えたより広い協定。
- EPAはFTAを含む、より大きな枠組みと理解する。
この章でつまずきやすいところ
グローバル経済の単元は、数字の大小と経済的な意味が逆転する場面が多く、本文を読み進める途中で判断を誤りやすい場所です。よくある迷いを整理します。
「1ドル=150円→100円」を数字が減ったから円安と読んでしまう
- つまずく場面:「1ドルが150円から100円になった」という一文を読んだとき、数字が小さくなったので価値が下がった=円安だと直感的に思い込んでしまう場面。
- 克服のコツ:1ドルを買うのに必要な円の量で考える。150円必要だったのが100円で済むようになった=円の力が強くなった=円高。数字の大小だけで判断せず、必ず「円の量」に置き換えて読む。
- ミニ例:本文で為替の数字が変わる場面が出てきたら、指で「1ドルを買うのに何円必要?」と確認しながら読み進める。
円安・円高の「得する人」をどちらも同じ立場で読んでしまう
- つまずく場面:輸出企業と輸入企業の話が続けて出てくると、円安・円高のどちらが誰に有利かが混ざり、輸出企業も輸入企業も同じように得すると思い込んでしまう場面。
- 克服のコツ:立場ごとに分けて整理する。円安は海外で売る輸出企業に有利、円高は海外から買う輸入企業・海外旅行者に有利。同じ為替の変化でも、立場によって得と損が逆になる点を意識する。
- ミニ例:本文に「円安」と出てきたら、まず「輸出企業がうれしい」場面を思い浮かべ、輸入品の値段は逆に上がる、とセットで確認する。
FTAとEPAを、まったく別の制度と読んでしまう
- つまずく場面:「FTA」と「EPA」が並んで出てくると、それぞれ独立した無関係の協定だと思い込み、どちらがどちらを含むのかが分からなくなる場面。
- 克服のコツ:包含関係で整理する。FTAは貿易の自由化が中心の協定。EPAはFTAの内容に投資・人の移動・協力なども加えた、より広い協定。EPAはFTAを内側に含む大きな輪だと考える。
- ミニ例:本文で「日本の協定はほぼすべてEPA」と出てきたら、日本は貿易の自由化だけでなくもっと広い協力まで結んでいる、と読み替える。
南北問題と南南問題を同じ格差の話としてまとめてしまう
- つまずく場面:「南北問題」のあとに「南南問題」が出てくると、どちらも発展途上国が関わる格差の話として同じにまとめてしまい、対立している当事者のちがいを読み落とす場面。
- 克服のコツ:誰と誰の間の格差かで見分ける。南北問題は先進国と発展途上国の間の格差。南南問題は発展途上国どうしの間で、資源の有無などにより生じる格差。「北 対 南」か「南 対 南」かで読み分ける。
- ミニ例:本文の「フェアトレード」「ODA」が出てきたら、主に南北問題(先進国から途上国への支援・公正な取引)への取り組みだと確認する。
練習問題
- 通貨と通貨の交換比率のこと
- 円の価値が上がること
- 円の価値が下がること
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(1) 為替相場(為替レート) (2) 円高 (3) 円安
為替レートが「1ドル=100円」から「1ドル=150円」に変わった。これは円高・円安のどちらか。また、日本の自動車を輸出する企業にとって有利・不利のどちらか。
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円安。輸出する企業には有利(現地でのドル価格が下がり売れやすくなるため)。
- 貿易のルールを話し合う国際機関の略称
- 投資・人の移動なども含む、日本が結ぶことが多い協定の略称
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(1) WTO(世界貿易機関) (2) EPA(経済連携協定)
円高が進むと、日本の輸出企業の一部が海外に生産拠点を移すことがある。これによって国内に生じる課題を、「産業の空洞化」という語を使って説明しなさい。
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例:円高で輸出品の現地価格が上がり売れにくくなるため、企業が生産拠点を海外に移す現地生産が進むことがある。その結果、国内の工場が減り、生産や雇用が縮小する「産業の空洞化」という課題が生じる。
まとめ
- 為替相場:通貨と通貨の交換比率。
- 円高=円の価値が上がる(1ドルに必要な円が減る)。円安=下がる(円が増える)。数字の大小だけで判断しない。
- 円安は輸出に有利、円高は輸入・海外旅行に有利。
- 貿易摩擦をきっかけに、WTO・FTA・EPAなど自由貿易の枠組みが整備されてきた。
- 南北問題・南南問題への取り組みとして、フェアトレード・ODA・マイクロクレジットがある。
もっと知る ── 発展・実生活(出典つき)
※ 教科書の内容に、信頼できる出典をもとにした発展・実生活・時事の話題を補足しています(教科書そのものではありません)。
日本銀行も「1円動けば円高・円安」と説明発展
日本銀行の解説ページでは、為替相場(為替レート)を「自国通貨と外国通貨の交換比率」と説明しています。円高・円安についても、同じ1万円を両替したときに受け取れる外貨の量で比べる例が示されており、円の価値が上がるか下がるかで考える基本の視点は教科書と同じです。
令和7年の税関長公示レートは1ドル=149.69円時事
財務省の貿易統計によると、令和7年(2025年)の税関長公示レート(貿易額を計算する際に使う為替レート)の平均は1ドル=149.69円で、令和6年(2024年)の150.97円と比べて0.8%の円高でした。教科書で学ぶ100円・150円という数字は例ですが、実際のレートもこのくらいの範囲で動いています。
FTAとEPAの違いは財務省も公式に整理発展
財務省の解説では、FTA(自由貿易協定)は物品の関税やサービス貿易の障壁の削減・撤廃を目的とする協定、EPA(経済連携協定)はそれに加えて投資・人の移動・知的財産の保護など幅広い経済関係の強化を目的とする協定と整理されています。日本が結ぶ協定はほぼすべてEPAの形をとっています。
フェアトレードは消費者庁の「エシカル消費」の一つ発展
消費者庁は、環境・人・社会・地域に配慮した消費行動を「エシカル消費」と呼び、その中に「フェアトレード製品を購入する」という項目を位置づけています。フェアトレードは、発展途上国の生産者や労働者からものを適切な価格で継続的に買うことで、生活の改善と自立を支える貿易の仕組みです。
出典:消費者庁「エシカル消費」
ODAは技術協力・有償資金協力・無償資金協力の3方法発展
JICA(国際協力機構)は、日本のODA(政府開発援助)の実施機関として、技術協力・有償資金協力(貸付)・無償資金協力の3つの方法で発展途上国を支援しています。南北問題への取り組みは、フェアトレードのような貿易の仕組みだけでなく、政府による援助という形でも進められています。
出典:JICA「ODAの基本」
